![投光器で照らされたイエローグローブ白鳥大橋蘭西店の店内でレジを待つ買い物客=27日午後3時15分、室蘭築地町](/contents/104/511/286.mime4)
室蘭地方で続いた大規模停電。教育や医療、福祉、商業など各方面に爪跡を残し、影響が続いている。室蘭市内のコンビニでは弁当類は売り切れ、カップ麺やパンを大量に買い込んでいた。室蘭や登別市内には数カ所の避難所が設置され、多くの市民が不安な夜を過ごした。
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胆振教育局によると、27日は管内では小中学校と道立・町立の高校、中等教育学校、特別支援学校で計69校が休校。うち室蘭市内では小中学校全26校が臨時休校となった。
被害は、北辰中などで屋内体育館の窓ガラスが割れたほか、知利別小では校舎の外壁が落下、海陽小での防風ネット倒壊などが報告されている。
市教委は「予想以上の強風だった。給食やスクールバスの運行といった関係もあるので、午前5時半に校長会が一斉休校を判断した」と話している。
市内の一部病院は、停電の影響で外来診療の受付を取りやめた。午前6時半に車で白鳥台の自宅を出発し、9時ごろに市立室蘭総合病院(山手町)に到着した関勲さん(77)は「困るけどこの状況では仕方がない」とあきらめた表情を浮かべた。
日鋼記念病院(母恋北町)にタクシーで1時間ほどかけて来た御前水町の山本光久さん(80)は「診察はしてもらえなかったが、普段3日分の薬をもらうところを1週間分に増やしてもらった」と話した。
両病院とも、自家発電機を使用して入院患者に対応している。夜間の緊急時は製鉄記念室蘭病院(知利別町)への救急搬送も依頼して対応した。
室蘭市福祉事業協会が運営する祝津町の特別養護老人ホームエンルムハイツ、養護老人ホーム・あいらんなどの福祉施設では、早朝からの停電により、建物内の照明器具はもとより、エレベーター、暖房機などが作動しない状態となった。
エンルムハイツの新棟は自家発電機が設置されているものの、旧棟(40人入居)とあいらん(75人入居)は暖房が作動せず徐々に室温が低下した。あいらんに入居している小倉秀夫さん(79)は「テレビが観れないのがさびしい。いつもより一枚多く着ているのでそれほど寒くはない」と話していた。
室蘭市内のコンビニでは、車のヘッドライトで店内を照らして営業。客の男性は「鉄塔が倒れているというので復旧は当分、見込めない。食料品をたくさん買いにきた」と疲れた様子。弁当類は売り切れカップ麺やパンを大量に買い込んでいた。
午後2時すぎには港南町地区にも停電が拡大。同町のセイコーマートみやけ店では、パソコンが組み込まれたレジが使えず、店員が商品の値段を棚をめぐって確認し、電卓で計算する作業に追われていた。一方、通電している長崎屋室蘭中島店では石油ストーブ30台を完売。さらに他店舗から30台を追加したという。
(本社・社会部)
![避難所となった鷲別公民館で体を休める市民ら=午後8時](/contents/104/511/288.mime4)
◆―― 避難住民 不安な一夜
登別市内では約2万戸が停電、市内4カ所の公共施設に約150人(午後9時現在)の住民が避難した。自宅や親戚家族の様子などを心配しながら暗い中で不安な一夜を過ごした。
登別市鷲別町の鷲別避難所には、市、自衛隊が準備した非常食500食、500ミリリットルのペットボトル入り飲料水500本、毛布150枚などの物資が運び込まれた。避難者は同町、美園町、若草町などの住民55人。自衛隊が設置した石油ストーブで暖を取った。
同市若草町の谷村外男さん(75)、ミイ子さん(71)の夫婦はラジオで同避難所の開設を知り避難。食料、水、毛布などがそろった避難所に「不便はない」と話しながらも「停電が2、3日続きそうだとラジオで聞いた。長期化すると心身ともにつらい。いつになったら元通りになるのか」と憔悴した表情で話した。
室蘭市内の避難所の一つ、栄町の武揚小学校では午後6時の開設を前に、市職員や同校教員らが受け入れ準備を開始。教室の床に体育マットを敷き、灯油ストーブ2台を設置、同6時半ころには毛布20枚と非常食を配布した。
最初の避難者は同5時15分ころに訪れた、中央町在住の女性(70)と次男(37)。女性は「40年住んでて初めて、恐ろしい。オール電化なので何も出来なかった。暗いのでご飯も食べれず、お手洗いに行くのも懐中電灯を照らしながらで大変。防寒対策はがっちりとしてきた」と張り詰めた表情を浮かべた。
(粟田純樹、吉本大樹、成田真梨子)
![暗闇の中、ろうそくとランプの明かりで夕食を取る多田さん一家=27日午後6時ごろ、中央町](/contents/104/511/289.mime4)
◆―― ランプともし夕食
27日夜、室蘭市中央町の薬局経営、多田昌央さん(59)宅では家族4世代がガスストーブの前でろうそくとランプをともして夕食を取った。昌央さんは「電気の大切さがあらためて分かった」としみじみ話した。
母の多年子さん(82)は「こんな暗い中で過ごすのは戦争中の防空壕以来。天災だから仕方ないですね。家族でろうそくを囲むのもいい経験です」と日本酒をちびりちびり口に運ぶ。
長男・裕一郎さん(30)の妻、可奈子さん(30)は娘の明莉ちゃん(1)におにぎりを食べさせながら「山口県出身で台風による停電は年1、2回経験していました。こういう生活は慣れています」と落ち着いた様子。
昌央さんの妻、桂子さん(59)は「でもこんな生活が明日も続いたら大変。早く復旧してもらいたい」と願っていた。
(山田晃司)
【写真=投光器で照らされたイエローグローブ白鳥大橋蘭西店の店内でレジを待つ買い物客=27日午後3時15分、室蘭築地町、避難所となった鷲別公民館で体を休める市民ら=午後8時、暗闇の中、ろうそくとランプの明かりで夕食を取る多田さん一家=27日午後6時ごろ、中央町】
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