主要企業の会社説明会が12月に解禁され、大学生の就職活動が本格化する。
就職難に加え、非正規労働者の増加、過酷な勤務の強制など、若者を取り巻く雇用環境は厳しさを増している。
今年3月に大学を卒業した56万人のうち、12万人が就職も進学もしなかったか、アルバイトなどで生活している。高卒者の求人数は最も多かった20年前の2割以下に落ち込んだ。景気が後退局面に入り、企業の採用意欲が一層冷え込むことも予想される。
これからの社会を担う世代の不安定な雇用は、産業の衰退や市場の縮小を招き、少子化に拍車をかけることにもなりかねない。衆院選で各党は、これまで以上に若者に目を向け、具体的な改善策を示してもらいたい。
3年以内に仕事を辞めてしまう若い世代の離職率は高止まりしている。最近は1年未満で辞める人が目立ち、2010年は大卒者の13%を占めた。
深刻な要因として、労働法令を守らない“ブラック企業”の存在が指摘されている。
長時間労働や過剰なノルマを強い、上司や先輩が暴言やパワーハラスメントを繰り返す。賃金や残業代を支払わず、不当に解雇する企業が横行している。うつ病や自律神経失調症を患い、自殺に追い込まれた若者もいる。
厚生労働省が10月、就職先を選ぶ指標にしてもらおうと、業種別の若者の離職率を初めて公表した。これだけでは不十分だ。企業ごとの離職率、法令違反の有無を学生や生徒が確認できるようにし、悪質な企業名は公表するなど厳しい処置を講じるべきだ。
非正規労働者の割合は10代後半で76%、20代前半で45%と高い。景気の低迷で企業の採用抑制、雇用調整が続き、生産拠点の海外移転も影響している。非正規で働く若者が技能や職業能力を高める場も十分に整っていない。
政府が6月に決めた「若者雇用戦略」は、不安定な就労形態や過重労働を改善する具体策を欠いている。労働者派遣法の見直し、非正規労働者の待遇改善、再就職しやすい雇用環境、私生活と仕事を両立できる職場…。踏み込むべき課題は山積している。
「安定した雇用」という決まり文句にとどまらない政策を、各党、各候補は用意しているか。選挙戦の大切な判断材料としたい。