「この人はまるで中国政府の役人のような物言いをするなとはっきり言って呆れてしまいました。それで複数の記者が大使発言の内容を日本の本社に送ったのですが、本社のほうで『あまりに過激な発言なので発表を見合わせよう』ということにしてしまいました。どの新聞社も、テレビ局も丹羽大使のこれらの暴言を報道していません」
大使館職員をあ然とさせた
送別会のあいだ中、丹羽大使は饒舌だった。丹羽大使は、「任期中に中国31の省・自治区・直轄地すべてを訪問する」と公言しており、実際、地方行脚が多かった。そこで記者の一人が、「大使は現代版の水戸黄門様ですね」と持ち上げた。すると、上機嫌で次のように答えたという。
「そうなんだよ。ほとんどすべて回ったんだけどね。最近は、外務省からストップがかかっちゃうんだよ。弾が後ろから飛んで来て大変なんだ。特に、8月の敦煌視察は楽しみにしてたんだけど、結局ダメになっちゃった。それ以来、地方に行けないまま、こうして任期が来ちゃったんだ」
この記者は、「大使としての視察を、敦煌観光の物見湯山と勘違いしているようで驚いた」と語る。
そこでこの敦煌の一件を、北京の日本大使館職員に確認すると、この職員も呆れ顔で明かした。
「8月12日に、反日活動家を乗せた香港の船が、尖閣諸島へ向けて出発しました。しかしそのニュースを聞いても、丹羽大使は、8月15日から19日まで予定していた『敦煌・蘭州視察』へ絶対に行くと言って聞かないのです。まるで雨が降っても遠足に行くと駄々をこねる子供のようでした。東京の本省からも再三、丹羽大使を説得し、8月13日の夜になってようやく断念したのです」
丹羽大使には、尖閣問題で日本外交がいかに正念場に立たされているかという自覚がまったくなかったのだ。
実はこうした丹羽大使の態度は、就任以来変わっていない、とこの職員は明かす。
「そもそも尖閣問題が沸騰したのは、2年前の9月に、尖閣諸島の海域で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突するという事件が起こった時からです。この時は、北京の日本大使館も非常事態となりましたが、その時、就任して間もない丹羽大使は、どうしてよいか分からず、あたふたするばかりでした。そのくせ『一体いつになったら地方視察を解禁してもらえるのだ』と、何度も本省に要求していたのです」
その後、丹羽大使と大使館職員たちが「乖離」したある事件が起こったという。
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