特集ワイド:第三極 「信頼できる政策提示なければ、単なる選挙互助会」 右傾化し支持集め、「脱原発」勢力結集も
毎日新聞 2012年11月27日 東京夕刊
しかるに今の「第三極」はどうか。「強くてしたたかな日本をつくる」と掲げ、「憲法改正」や「集団的自衛権の行使」に向けて積極姿勢をとる石原、橋下両氏率いる維新は「リベラルの受け皿」どころか、イデオロギー的には自民党よりも右傾化が目立つ。石原氏は20日に東京都内で行われた日本外国特派員協会の講演で「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいい。これも一つの抑止力」と発言。橋下氏も10日に遊説で訪れた広島市で核兵器の廃絶を「現実的には無理」などと語っている。維新が民自の増税路線や原発政策を批判し、受け皿になるような政策を掲げるなら堂々の「第三極」だが、維新の現状は「保守の受け皿」に近い。
それでも各種の世論調査では、維新は民主党をしのぎ、自民党に迫る支持率を誇る。「社会の閉塞(へいそく)感や尖閣・竹島の領土問題、さらにお金を国民に分配する社会システムが頓挫してしまったことが背景にある。ナショナリズムをあおり、国民のフラストレーションのはけ口になろうとしているかのようです」(野中教授)
「第三極はかなり怖い感じがするなあ」。政治家らに扮(ふん)した社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」のリーダー、渡部又兵衛氏は言う。「石原さんは尖閣諸島などの領土問題で中国ともめごとが続いたら『戦争だ』と言い出しそう。橋下さんも『君が代』の起立斉唱を義務付けた頃から右寄りが鮮明になった。彼らは『領土は自分で守る、自衛隊の強化だ』と言うけれど、ささいなことで戦争が起きてしまうかも。この国が良くない方へ向かう足音が聞こえるようです」
「ザ・ニュースペーパー」が今月中旬に行った北海道公演で、「石原氏」と「橋下氏」は、ヨットの中で密談した。12月公演の最終日は衆院選投票日。石原、橋下両氏を舞台に登場させるとしたら? 「2人で『尖閣諸島まで突っ走るぞ!』ということになるかなあ。大体、第1党になったとしても党内で政策がバラバラだし、民主の二の舞いになるんじゃないですかねえ」
となると「平和」を掲げる公明党に元祖「第三極」の役割を期待したいところ。だが野中教授は「公明は連立政権内で重要な役割を果たす要の政党を目指している。『自分たちは政権の補完勢力になるのではなく、政権そのものを担いたい』と主張する維新などとは全く違います。今さら第三極になろうとはしないでしょう」と解説する。
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ならば、いわゆる左寄りやリベラル勢力の「第三極」の結集はないのか?