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'12/11/25

絆・団結の快進撃 森保采配


 開幕戦を翌日に控えた3月9日、サンフレのチーム力の源泉である強固な絆は生まれた。選手に語り掛ける森保一監督。声は次第に震え、目には涙がたまったという。「キャンプからよく頑張ってくれた。みんなをベンチに入れたいが…」。選手は意を強くした。監督を男にしよう、と。団結の快進撃のスタートだった。

 2年契約で迎えられた新監督を取り巻く環境は厳しかった。クラブは累積赤字解消のため減資を実施。経営安定化に向け、実績のある選手を放出した。攻撃サッカーの礎を築いたペトロビッチ監督(現浦和監督)の退任と相まって、前評判は低かった。

 新人監督はマイナスをプラスに変えた。戦術面では前任者の良さを残しつつ自ら培った守備戦術を植え付け、攻守にバランスの取れたサッカーを実現。懸案だった選手層の薄さも、若手を信じて鍛えて力を引き出した。

 監督と選手の垣根は設けない。就任直後には「君の力が必要。一緒に戦おう」と、選手一人一人に直接電話した。感激し、進めていた移籍話を中止した選手もいる。プレー面で指示する時も「選手目線の意見が大事」と、話を聞く。試合に勝って興奮した選手が愛称の「ぽいち」と呼んでも、「今日だけだぞ」と笑って受け入れる。「主役は選手で、力を出し切れる環境づくりが監督の役割」と信じる。

 そんな指揮官が激怒した試合がある。6月16日のC大阪戦、先制後に追いつかれ迎えたハーフタイム。「下を向いたままでいいのか」。ロッカールームに怒声が響いた。植え付けてきたはずの「戦う姿勢」が見られなかったことが、プロとして許せなかった。

 「あんな森保さんは初めて。あそこまで言われるようではプロじゃない」。選手たちは奮起し、後半3得点して快勝。ナイーブさが消え、精神面で一皮むけた瞬間だった。

 創設以来の伝統だった育成力に、ここ数年で土台を築いた攻撃サッカーの哲学。限られた予算でも明確な指針があれば不可能がないことを証明し、地方クラブの在り方を示した。Jリーグに革命を起こす快挙だった。(日野淳太朗)




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