駆除の危機? 観光名物「奈良のシカ」の知られざる生態

[2012年11月25日]


観光客にせんべいをおねだりするシカたち。朝日新聞の「(奈良)県が駆除検討」という趣旨の記事が波紋を広げている

“神の使い”として、1000年以上も人々から大切に保護されてきた奈良のシカ。国の天然記念物になったこともあって、今では奈良公園(奈良市)内だけで1000頭以上が生息する。

その奈良のシカをめぐって、地元でひと騒動が起こっている。

きっかけは朝日新聞が11月12日付で報じたこんな記事。

「奈良のシカ 県が駆除検討 公園外の食害絶えず」

シカが増えすぎて近辺の田畑を食い荒らすため、県が駆除を検討しているというのだ。

これに怒ったのが全国のシカファンたち。「つぶらな瞳のシカを殺すなんて、けしからん!」と、12日だけで100本以上の苦情電話が殺到してしまった。

だが、そもそも朝日新聞の記事には大きな間違いがあるとか。奈良公園を管理する奈良県奈良公園室の幹部職員がこう怒る。

「シカの駆除を前提にシカ対策を検討するなんて誰も言っていません。朝日新聞には訂正の記事を出すよう、抗議しました」

いったい、どういうこと?

「シカの食害が増えているのは事実。公園周辺の田畑から市中心部の家庭菜園にまで拡大しています。このままだと『シカを駆除しろ』との声が強まり、1000年続いてきた人とシカの共生ができなくなってしまう。それはまずいと有識者や市民から意見を聞き、奈良のシカの保護管理計画をつくろうとした矢先だったんです」

シカによる食害が増えすぎて「駆除しろ」という大合唱にならないよう、10年ぶりに保護管理計画の検討に乗り出していたというわけだ。それをいきなり「駆除検討」と書き立てられたのだから、奈良公園室の怒りはもっともだ。結局、苦情が殺到したことにより、保護管理計画の検討は当分の間の凍結が決まってしまった……。

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