河村たかし名古屋市長は市長のまま、新党代表として衆院選を戦うことを決めた。地域から国を変えるとした原点を忘れず、来年四月の任期満了まで名古屋の庶民革命と市政に全力をあげてほしい。
市長は「気さくな市長として引き続き市民の皆さんに奉仕する」と国政転身を否定した。命ある限り「総理を狙う」と言う。悩んだ末の決断だろう。任期まで市政で汗を流すことを歓迎したい。
市議報酬の年八百万円への引き下げなど大胆な政策を実現し、市とのなれあい体質だと自ら批判してきた議会にカツをいれた。
公約の目玉であった市民税の恒久減税は、選挙で約束した10%から5%に減税率が下がったものの、本年度からスタートさせた。
だが、市予算の一部の使い道を地域から選ばれた委員が議論して決める地域委員会はモデル実施が続く。中京都構想は、ようやく大村秀章愛知県知事と議論を再開できるメドがついた段階だ。
地域政党を立ち上げたのは、市長の言う庶民革命を名古屋で実現するためであった。その原点の改革は、まだ道半ばである。
市長に国政でも改革を進めてほしいと望む市民もいるかもしれない。だが、もしも国政を重く見て転身していたら、市長選史上最高の約六十六万票を与えた市民を裏切ることにならないか。
国政に転身しない大きな理由の一つは、名古屋の減税日本と大阪、東京の第三極の大同団結がうまくいかなかったことであろう。
今後は市長と国政政党の共同代表を兼務する。あちこちで衆院選に向けた選挙互助会的な数合わせや選挙区調整が目に余る。何よりも政策協議を最優先して新党の枠組み作りを進めてほしい。
市政運営で、最近の市長は公約実現に議会の協力が得られず、解散権のないことにいら立ちを見せていたようにも映る。
だが、地方自治は、住民が市長と議員を直接選ぶ二元代表制だ。市長選で圧倒的な民意を得たのは事実だが、市議選で市長にフリーハンドを与えなかったのもまた民意である。
今やるべきは、自ら率いる減税日本市議団の鍛錬である。立案力も討論の力もまだまだである。不祥事も相次いだ。
沈滞していた市政にショックを与えた市長の手腕は認めたい。予算編成は大詰めだ。決断を惑わず、市民生活に支障が出ぬよう、心して市政に取り組んでほしい。
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