コミュニケーションの形が変わりつつある

佐藤 ソーシャル・メディアが発展すれば、理屈からするとテレビ電話で話してもいい。ところが、そうならないんですね。ナマの人間同士が限られた場所で会う。エリート層というのは、じつは気むずかしくて人と合わない。だから、ソーシャル・ネットワークは人脈を一見拡大するように見えるけれども、本当の人脈は狭くなる。インドの巨大企業のCEOが直接聞き取って、頭づくりをしているということと、株式の公開をやめる、ということはどこかでつながっている。コミュニケーションの形、特にエリート層のコミュニケーションの形が変わりつつある。

竹中 そう思います。そういう中で、大きな課題として残ってくるのは、社会の格差の問題です。必然的に所得のばらつきは出るわけですから。フラットな世界が実現していくのも事実だけれど、スパイキーな(とんがった)世界が実現していくのも事実で、非常に高い所得を得るクリエイティブ・クラスに対して、画一的な商品をつくる人たちはどんどん収入がフラットになっていく。この格差は明確になってきている。ただし、これは一種の多様性の表現でもあるので、これをある程度受け入れなくてはいけない。

佐藤 やきもちによってエリート層、金持ちを引きずり落としたら、みんな貧乏になる。一方で、エリート層はチャリティによる再分配を心がけることです。それと、マルクス経済学の資本論の論理が必要になってくるのは、労働力の再生産でしょう。特に子どもをつくって、教育によって質のいい労働力を担保していったりするためには社会的な政策が必要です。もうひとつは、思想ですよ。サミュエル・スマイルズの『自助論』にしても、共同体における相互扶助の重要性については語っている。

竹中 ですから、孫正義さんみたいな人が出てくるのをやっかむのをやめましょう。さもしい格差論に与しないようにしましょう、と。結局、孫さんみたいな人がたくさん出てくること、そしてその人が自由な税制の下でたくさんの寄付をするようにして、贈与を通して社会の秩序が保たれていくことが必要だと認めていかないといけない。その萌芽はマーケットを見ていると明らかにあって、いまエアラインのファースト・クラスはすごく豪華になっている。個室になっているわけですから。一方でLCC(格安航空会社)が出てくるわけです。これがいまのマーケットなんですね。

「エンパワーメント」がキイワード>>>

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