「この文面を見ると、『みなさん、パブリックコメントを出してくださいね』と、会社が社員に要請していると受け取られても仕方がない。いくら社内文書とはいえ、この繊細な時期に臆面もなくこうした文書を配るのは、『俺たちが、なにも分かっていない連中に原発の必要性について教えてやらなければならないんだ』という、電力会社特有の〝上から目線〟体質が、原発事故以降もまったく変わっていないことの現れといえるでしょう」
この文書が中国電力幹部に配られたのは7月12日のこと。7月16日には中部電力社員が意見聴取会に出席して世間の批判を浴びたが、その直後にはこんなドタバタがあった、と中国電力の社員が明かす。
「さすがに『あの内部文書には問題がある』と思ったのでしょうか。7月19日には新しい文書が配られました。そこには『意見聴取会やパブリックコメントの募集において、会社として社員に対し応募や提出を促すことは、これまで同様一切行いません』との一文が記されていた。万が一内部告発などが起こった場合を想定して、急遽作成したのでしょうが、『あれで〝提出を促さなかった〟はないよな』との声が社内でも上がりました」
それだけではない。中国電力は幹部社員に対して、次のようにも要請している。
〈各所において日頃からお付き合のある社外のオピニオンリーダーのうち、電力に理解のある方々を対象に、(中略)選択肢の内容および当社の考えを説明してください〉
オピニオンリーダーとは、大学教授や地元政治家らを指しているようだが、彼らにも「原発は必要」という意見と主張を広めることに一役買ってもらおうとしているのだ。
「文書を作成した経営企画部門と広報部門は、実際にオピニオンリーダーに説明したかを報告するように幹部らに求めました。社員が説明した相手には、パブリックコメントに親原発の意見を送ることを期待していたようです」(同・中国電力社員)
電力会社が第三者に対してパブリックコメントを送るように要請したり、原発は必要というメッセージを発するように要請したのなら、これはれっきとした「やらせ」ではないか。
国民の声を無視する技術
ご丁寧にも同文書には、そうした批判を予想して、
〈当社から社外の方に何らかの依頼や働きかけを行うことは、公平な議論を妨害する「やらせ」と受け止められる恐れがあります。
このため、「当社の考えのご説明」というスタンスを徹底し、当社意見の代弁を依頼していると受け止められかねない言動は絶対に行わないでください〉
という注意が書かれている。しかし、「説明しただけで、要請はしてない」という理論が通用すると思っているのなら、呆れるよりほかない。これが原発から離れられない「原発ポチ」のマインドなのである。
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