New Business Heroes of Capitalism 2012!!
新しい資本主義が日本から生まれる可能性はある!【3】──竹中平蔵 × 佐藤 優

小泉内閣で金融の国務大臣をつとめた「平成の鬼平」こと竹中平蔵・慶應義塾大学教授は、いま、どこに資本主義のフロンティアがあると考えているのか?最近、行動経済学者としての竹中平蔵に注目する、元「外務省のラスプーチン」佐藤 優を対談相手に迎え、変わりつつある資本主義の最前線を討論する。司会は、経済アナリストの「ぐっちーさん」がつとめる。

話す人:竹中平蔵+佐藤 優 司会・立会人&構成:ぐっちーさん 写真:宮本敬文


※この記事は新しい資本主義が日本から生まれる可能性はある!【1】【2】の続きです。

インドネシアとネクスト11

ぐっちーさん

ぐっちーさん
1960年生まれ。本名・山口正洋。丸紅を経て86年ウォールストリートへ。モルガン・スタンレーなどを経て、ブティック(ある専門分野)型の投資銀行を開設。M&A から民事再生、地方再生まで手がける一方、「ぐっちーさん」のペンネームで経済金融評論家としてブログを中心に活動中。

竹中 今後、資本主義の当面のフロンティアである「BRICs」(経済発展の著しいブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国を指す)にどういう新しい問題が出てくるのか。もっとも、ブリックスという言葉は2001年で、05年に「ネクスト11」という言葉ができるわけで、これにはアジアではベトナム、インドネシア、フィリピン、韓国が入っている。私はたまたま来週インドネシアに行くんですけど、インドネシアがネクスト11に入っているひとつの大きな理由は、2億人以上の人口と豊富な天然資源です。けれども、いままでにないディフィカルティも持っていて、それは多民族国家であるとか、国土がいくつもの島に分かれているとか、ともかく多様性がある。

その多様性をどのように取り入れていくか。ただ、インドネシアも含めて、資本主義を変えていく、無視できない大きな要因はやっぱり技術革新なんですね。技術が変わってマーケットが変わったときに新しいライフスタイルが出てきて、その新しいライフスタイルにふさわしい制度がつくられていく。たとえば、産業革命のとき工場がつくられる。それまで家内制手工業でご主人と奥さんが一緒に働いていたのが、誰かが工場に行って、誰かが家にいないといけなくなって、じつは男女の職業分離というのは産業革命がつくっているわけですね。

佐藤 男女が分かれて、あるいは仕事の場と生活の場が別になるのは人類史の中では非常に短い。教育にしても、同じぐらいの年齢の人が集団で教育を受けるというのも、人類史では非常に珍しいことです。

竹中 産業革命ってやっぱりインパクトがあった。新しいソーシャル・メディアがどのような資本主義をつくっていくのか、まだ全体はわからない。ただ、橋下徹現象なんかそうですけれども、マスコミはうねるわけですね。つねにだれかを持ち上げると、どこかが下げる。そのうねりを、ソーシャル・メディアが大きくしている。「これはおもしろいよ」「こいつはひどいよ」と。こういう変化はいまの日本でも出ている。

佐藤 一種のプリズム・レンズのような感じですね。竹中 その一方で、もうひとつソーシャル・メディアがつくっているのはライフスタイルの多様性です。人生のときどきで、同じ人が違うライフスタイルを選びたいと思う、そういう願望を半ば実現しつつある。

佐藤 それは人間の複合アイデンティティとも関係してくる。だからインドネシアという例はおもしろくて、言語におけるアイデンティティもあれば、文化、宗教も多様で、そのうちのどれとどれをつなげていくか。

竹中 結局そういう多様性を許容するシステムでなくてはいけない。多様性を許容するマーケットであり、会社法であり、そして消費者の権利を守る制度でなければいけない。それが非常に大きなチャレンジで、だから私はインドネシアは興味深いと思うんですね。

コミュニケーションの形が変わりつつある>>>

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