New Business Heroes of Capitalism 2012!!
新しい資本主義が日本から生まれる可能性はある!【1】──竹中平蔵 × 佐藤 優

小泉内閣で金融の国務大臣をつとめた「平成の鬼平」こと竹中平蔵・慶應義塾大学教授は、いま、どこに資本主義のフロンティアがあると考えているのか? 最近、行動経済学者としての竹中平蔵に注目する、元「外務省のラスプーチン」佐藤 優を対談相手に迎え、変わりつつある資本主義の最前線を討論する。司会は、経済アナリストの「ぐっちーさん」がつとめる。

話す人:竹中平蔵+佐藤 優 司会・立会人&構成:ぐっちーさん 写真:宮本敬文


竹中平蔵 × 佐藤 優

資本主義はずいぶん変わっている

──平成の2大賢人に「資本主義のフロンティアはどこにあるのか?」をうかがいたいと思います。

竹中 資本主義とか市場の経済は、長い目で見るとずいぶん変わっているといえば変わっているわけです。一番大きな変化は「ゴーイング・コンサーン(going concern=継続企業)」になったこと。会社のはじまりは17世紀初めの東インド会社ですが、これは1航海するたびに利益を分け合って、その度に解散していた。それが普通の企業で、普通の生産の営みだった。ところが、産業革命で機械を据えつけるようになると、社長が死んでも次の世代が引き継ぐようになった。これが「ゴーイング・コンサーン」です。

佐藤 利益を1回1回分けるというのは、社会主義から資本主義へと移行する時期のロシアがそうでした。ロシア・マフィアのビジネスの仕方は、貸し借りをつくらない。国有の財産を分捕ってくる。それを1航海とすれば、まさに重商主義を私は移行期のロシアで目にしました。

竹中 私が申し上げたいのは、むしろ現在は1航海で終わるビジネスが増えてきている、ということです。知的なもの、たとえば、ある人が研究所をつくった。その研究所ではその人を前面に立てていた。と、その人が亡くなったら、どんな人が継いでも別のものになってしまう。ビジネスだって、たとえば、浅利慶太さんがいるから劇団四季はあるわけで、もし浅利さんがいなくなったらどうなるのか。現代は知的なものが重要な社会だから、それがひとつの方向かな、と。

もうひとつ大きな変化は、資本家と経営者が必ずしも分離されなくなった。昔は、企業が大きくなるためには資本を集めないといけないので、株式市場に上場する必要があった。そこでプロの経営者を招いた。経営者と資本家は違っていたわけです。ところがいまは、出版社の幻冬舎がそうですけど、上場を廃止した。上場のメリットなんかないと。

日本の企業も、ユニークなところ、たとえば、森ビルは上場していない。サントリーも上場していない。そのほうが、株主とかコンプライアンスとか、うるさいことをいわれないで思い切ったことができる。昔に較べたら鉄をつくるわけじゃないから資本はそんなにいらない。そういう大きな変化がある。その先になにがあるかについては、これから議論したいけど、キックオフとして、資本主義は変化しているし、昔に戻っていく面もある、と申し上げておきたい。

固定観念で資本主義を見ない>>>

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