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T.太極拳初歩健身運気法(その1)
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この初歩健身運気法は、太極拳における先天の気と後天の気(身体内
部の上層の気と下層の気)の昇降を教えるものであり、太極拳の修行に
おいては、先ず初めに学ぶべきものであります。
【 なお、この先天の気と後天の気については、この「太極拳初歩健身
運気法」の連載が終了してから、「太極拳における気の呼吸及び運気法」
で解説しますので、ご期待ください。 】
またこの功法は、別の面で便利な効用があります。それは、なんと旅行や
環境的な事情で太極拳を練習することが出来ないような時でも、これさえ
やっておけば、筋骨を引き伸ばし、気血を調和し、内勁を増加して、その
本来もてる所の功力(功夫)を保持することが出来るという、まったく便利
なものです。要するにズルしていてもコンフーを保つことが出来るわけで
すな。(^-^)v
(なんか以前に載せた練功法にコンセプトが似ています。(;^_^A 覚えてい
ますか?鐵沙掌の混元掌功……。)
そういう訳で、この運気法は初歩に属するものではありますが、技芸の高
い人でも、多くの人が密かにこれを練習していたらしく、楊家太極拳におい
てはかなり秘密性の高い運気法として伝えられていた様です。ですから、こ
の法を軽んじるべきではないと原典に記されております。
なお、文章だけで解りにくいと思いますが、このメルマガでは図を載せる
ことが出来ないので、マガジン発行後、私のHPのバックナンバーのコー
ナーに載せておきたいと思っておりますので、
今しばらくお待ちください。 m(__)m (ちょっと時間がかかるかも!!)
それでは早速、運気法の本文に入ってみたいと思いますが、全部で
二十一式ありますので、例の如く3回に分けて七式づつ解説していきます。
第一式(第一図)
先ず、両足を揃えて立ちます。(踵もつま先も合わせます。いわゆる結び
立ちというやつです。)頭を真っ直ぐにし(虚霊頂勁)目は前方を見つめま
す。舌は上顎に着け、唇も歯も軽く閉じておきます。(太極拳の起勢の時
と同じ要領。)
続いて鼻から息を吐きます。(中焦の気を上下二層に分け、上層部の
気を鼻から吐き出し、下層部の気はゆっくりと丹田に沈めていきます。)
姿勢は沈肩垂肘・含胸拔背を守り、両手の掌心で下方に向かって按を
します。この時、指先は当然前方に向くこととなります。
拙力(むやみに力んだ力)を用いないで、意念と気を用いて下方への
按を行います。肘は少し曲げて、伸ばしてはいけません。全身をリラッ
クスさせてゆったりと力を抜きます。ただ背骨は真っ直ぐにして、頭頂
部を突き上げる様な気持ちで屹立させます。
この動作は非常にシンプルに、内気の呼吸の転換を行うものです。ただ、
「呼」の一字があるだけです。
【 注 : 初学者は、最初の内は呼吸にとらわれることなく、動作を先ず覚え
ましょう。鼻で行う呼吸に関しては、その気の昇降にとらわれることなく自然
に任せた方が良いです。というのは、内気が未だ貫通していない時に、無
理やり内気を貫注させると、弊害が発生する恐れがあるからです。初学者は
出来るだけ慎重に行ってください。(これは原文にある注をそのまま訳しま
した。)】
第二式(第二図)
前式に続いて、両手を同時に左右に肩の高さに伸ばします。掌心は下に
向いています。(肩の高さで一文字に伸ばす。)気は両腕を左右に持ち上げ
る時に鼻から吸って(この時、先ほど沈めた丹田の気、即ち下層の気を圧
迫して脊背部に移動させます。)、両手が左右に展開し終わったら呼気に
移ります。(下層の気を丹田に沈めます。)
この式もただひとつの動作だけです。ただし、内気の呼吸は二度の転換
があります。(吸うと吐く)【ちゃんと出来ていると、この時伸ばしている両腕
に気の流れを感じるでしょう。(^-^)v】
第三式(第3図)
前式に続いて、両腕をそのままの高さで前方へ移動させ、何かを抱くよう
な形になります。右手が上です。(上層の気を鼻より吸い入れ、下層の気を
脊背部に移動させます。この内的呼吸動作を「気貼脊背」と言いまして、
太極拳に限らず、気を用いて人を打つ方法をとる内家拳では非常に重要な
身体操作です。)腕は斜めにクロスさせる形となっています。掌心は下に
向いたままです。
次に含胸拔背の姿勢になると同時に、指先と掌心の気を抜き、(腕をクロ
スさせた部分より先の力を抜くということ。)だらりと垂れた状態にします。
当然ながらこの状態では、掌心は自分の方に向き、指はだらりと垂れます。
(この動作の時、上層の気を吐き、下層の気を丹田に沈めます。)
この式は二動作と二呼吸(吸うと吐く)です。
第四式(第四図)
前式に続いて、今度は両手を内に捻りながら自分の方に掌心を向けます。
この時丁度クロスした腕で胸を抱くような形となります。同時に徐々に膝を
屈して軽く腰を落とします。(鼻から気を吸い入れ上層に満たし、「気貼脊
背」を行います。)
この式は一動作と一呼吸(吸う)です。
第五式(第五図)
前式に続いて、両肘を後ろへ引く様にして、両掌を上に向けた状態で両
腰(骨盤の所)の脇にもってきます。指は前方に向いています。同時に膝
を伸ばして立ちあがります。(呼吸は前式に引き続いて、吸いながら「気貼
脊背」を続けます。)
この式も一動作と一呼吸(吸う)です。
第六式(第六図)
前式に続いて、今度は両腕を前方に伸ばします。掌心は上に向いたまま
です。高さは胸と肩の間ぐらいです。同時に両膝を曲げて少し腰を落としま
す。(上層の気を吐きながら下層の気を丹田に沈めます。)
この式も一動作と一呼吸(吐く)です。
第七式(第七図)
前式に続いて、両手を左右に掻き分けるように移動させ、肩の位置で左
右に伸ばします。(肩の位置で一文字)掌心は上を向いています。気は両
手を左右に展開させる時に吸います。(下層の気を「気貼脊背」にします。)
続いて両腕を左右に伸ばし終わったら、呼気に移ります。同時に膝を伸ば
して立ちあがります。(下層の気を丹田に沈めます。)
この式の動作はひとつで、呼吸は二つ(吸うと吐く)です。
< 以下次号へ続く >
なんか「どうもよくわからないなぁ。」という皆様の声が聞こえてきそうです。
そうですよねぇ。いきなり「上層の気」「下層の気」とか「気貼脊背」とか言わ
れてもわかりませんよねぇ。でも、これは内家拳にとっては大変重要な身
体内部の操作なのです。
理屈がわかってしまえば「なぁーんだ!!」というぐらい簡単なことなので
すが、解説を受けないと意味がわからないと思います。これについては
後に掲載を予定しております「太極拳における気の呼吸及び運気法」の
中であきらかになると思います。
もし、それだけでは解りにくいと思われる時には、不肖私が解説させてい
ただきたいと思いますが、それは先の号でのお楽しみということで、とりあ
えずこのまま「太極拳初歩健身運気法」を連載させていただくこととします。
でも、この「太極拳初歩健身運気法」は、なかなか優れものだと思います
ので、太極拳修行者の方は身につけられておくと大変役に立つと思います。
(本来は実習はお勧めしていないのですが……。(;^_^A )
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U.単練式基本採腿法(おまけ)
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実は「最近、わがMMはちょっと武術から遠ざかっているかなぁ〜。」なん
て思いましたので、たまたま「太極拳初歩健身運気法」のすぐ近くにこの
採腿法があったので、おまけとして翻訳してみました。(^^ゞ 以下その
翻訳です。
拳術の中で、採腿は翅腿等に比べて大変凶猛であります。翅腿というの
は足尖或いは足縁を用いて人を蹴るのですが、採腿は足心を用いて人の
膝蓋骨を踏み砕くとともに面部を打つという技法で、非常に危険なものです。
凡そ、この採腿で蹴られた者は必ず死ぬか重傷を負うというものです。
太極拳の中ではこの採腿を用いる個所がたくさんあります。ただし、教え
る側はこの部分の用法等を明かにしません。それはやはり人を傷つける
のを恐れたゆえでありましょう。
しかしながら、太極拳の蹴り技を行うにあたって、足腰の基礎を固めると
いう意味でこの採腿の技術を練習しないわけにはいきません。
その練習の方法は、もし右足を以って採腿を行うときには、右手を何か
掴むようにして腰の所に引き付けると同時に、左手の掌を前方に打ち出
して相手(仮想敵)の面部を打ちます。(この場合の左手の動作を「閃」と
言います。)この時の左腕は完全に伸ばさないで少し曲げておく方が良い
でしょう。
同時に右足の足心で相手(仮想敵)の膝蓋骨を踏むように採腿を行い
ます。この動作を行う時には、軸足(この場合は左足)は少し曲げて腰を
落とすようにします。つまり、右足で下方に踏み蹴るとともに、両手は前
後に分けて用いながら、左膝を曲げて重心をすべて左足にかけます。
姿勢は含胸拔背・気沈丹田・虚霊頂勁・鬆腰坐胯の原則を守ります。左
足で採腿を行う時は上記の反対の動作を行う事になります。なお、引きつ
ける手の掌は下を向いています。
この採腿を練習する時は、両足を交互に連続して練習します。久しく続け
ると、四肢の動きがひとつにまとまってくるとともに、足腰に坐勁が生じてき
ます。もしそうでなければ、いくら人を蹴ろうと思って足を出しても、身体が
浮いていますので、人が倒れる前に自分が倒れてしまうという事になりか
ねません。ですから、よくよく練習しないでは、この採腿を使うことは出来
ないのです。
【 採腿のコンセプト、お解りいただけたでしょうか。要するに相手(仮想
敵)の腕など掴んで、採の技法によって引き落とすことにより、一方の足に
敵の重心を移動させ、その膝を踏み砕くわけです。同時に面部を(引き手
と)反対の手で打っていますので、上下一度に攻撃する事になります。これ
は非常に避けにくい攻撃です。上か下かのどちらかの攻撃があたる事に
なります。もし運が悪くて両方あたれば本当に重傷を負いかねません。(-_-;)
実際に使わないですむことを祈ります。 】
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T.太極拳初歩健身運気法(その2)
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前号からの続きです。今号は第八式からです。
(なお、前号の附図は私のHPのバックナンバーのコーナーに貼り付けて置
きましたので、ご参考になさってください。今号の分の附図は、またしばらく
してからUPしたいと思います。動作がのろいもので…。(;^_^A)
第八式(第八図)
前式に続いて、両手をゆっくりと握りながら上に挙げ、肘の所で曲げて両
耳の横までもってきます。(前腕で弧を描く様になります。)この時虎口は
上を向いています。また、拳は強く握ってはいけません。両腕は力まず、
無駄な力を抜きます。
次に全身の脱力とリラックスを心がけ、含胸拔背となりながら膝を曲げて
少し腰を落とします。(ここまでを一動作で行い、鼻から気を吸い入れ上層
に満たし、下層の気は「気貼脊背」を行います。)
この式は一動作と一呼吸(吸う)です。
第九式(第九図)
前式に続いて、拳を外に纏糸(捻る)します。虎口は身体の方を向き、相
対する形になります。拳心は外を向きます。(気は引き続き吸って上層に
満たしながら、下層の気も引き続き「気貼脊背」を行います。)
この式も一動作と一呼吸(吸う)です。
第十式(第十図)
前式に続いて、両拳を掌に変え、左右に展開して肩の高さに伸ばします。
(一文字形)掌心は下に向け、指を伸ばします。また、膝を伸ばして身体を
ゆっくりと上昇させます。(上層の気を吐き、下層の気を丹田に沈めます。)
この式は一動作と一呼吸(吐く)です。
第十一式(第十一図)
(一) 前式に続いて、ゆっくりと両拳を握りながら、第八式の様に両拳を耳
の所にもってきます。この時虎口は上を向いています。続いて含胸拔背と
なりながら膝を少し曲げて、ゆっくりと腰を落とします。(気を吸って上層に
満たしながら、下層の気で「気貼脊背」を行います。)
(二) 両拳を同時に上に挙げて太陽穴の位置まで移動させます。膝を
ゆっくりと伸ばして立ちあがります。(引き続き気を吸いながら上層に満た
します。下層の気も同様に「気貼脊背」を行います。)
(三) 引き続き両拳をさらに上に挙げて頭頂部の高さまで挙げます。(引き
続き気を吸いながら上層に満たします。下層の気も同様に「気貼脊背」を行い
ます。)
この式は動作は三で、呼吸はひとつ(吸う)です。
第十二式(第十二図)
(一) 次に拳を掌に変えて、上方に物を持ち上げるような動作をします。
この時掌心は上に向け、指先は向かい合わせます。この動作に合わせて
膝をさらに伸ばして足を真っ直ぐに伸ばします。そしてさらに踵を上げてつ
ま先立ちとなります。(上層の気を吐き、下層の気を丹田に沈めます。)
(二) 続いて頭上の両手を手首の所で交叉させます。この時右手が上で
左手が下になります。掌心はどちらも外に向けます。(ここで気を吸い入れ
上層に満たしつつ、下層の気で「気貼脊背」を行います。)
(三) 次に両手を同時に下へ降ろし、胯(腿の付け根)の横の位置まで
もってきます。掌心は上を向けて、指は前方へ伸ばします。この動作ととも
に膝を少し曲げて腰を落とし、第五式と同じ形になります。(気は引き続き
吸って上層に吸い入れ、下層の気は引き続き「気貼脊背」を行います。)
この式は動作は三で呼吸は二(吐くと吸う)です。
第十三式(第十三図)
(一) 頭部を真っ直ぐにし、両掌は内側に寄せる様にして、下腹の前で
重ね合わせ、掌心は上に向けます。両手の親指は向かい合わせ、左手を
上に右手を下にします。(上層の気を吐き、下層の気を丹田に沈めます。)
(二) 続いて両手は動かさず、上体を左に捻りながら頭も上体とともに
左に振り向け、さらに左後方を見ます。ゆっくりと頸がもうこれ以上回らない
ところまで回します。(気を吸って上層にいれ、下層の気で「気貼脊背」を
行います。)
(三) 上体と頭部を元の正面に戻します。(上層の気を吐き、下層の気を
丹田に沈めます。)
(四) 続いて両手は動かさず、上体を右に捻りながら頭も上体とともに右に
振り向け、さらに右後方を見ます。ゆっくりと頸がもうこれ以上回らないところ
まで回します。つまり、先ほどとは反対の動作を行うわけです。(気を吸って上
層にいれ、下層の気で「気貼脊背」を行います。)
(五) 上体と頭部を元の正面に戻します。(上層の気を吐き、下層の気を
丹田に沈めます。)
この式は五つの動作と五つの呼吸(吐く、吸う、吐く、吸う、吐く)です。なお、
この頭部を左右に振り向ける動作はさらに2〜3回繰り返しても良いです。
第十四式(第十四図)
前式に続いて、両手の掌心を内側から翻して下に向けます。(当然手の
甲は上に向きます。)続いて上体をゆっくりと前に倒していき、腰を基点に
して身体を前方に折り曲げます。出来る方は両掌を地面につけてください。
この時両手の指先どうし向かい合わせておきます。また、膝が曲がらない
様に注意してください。
初学者は両手が地に付かなくても、無理をしてはいけません。出来る所ま
でで、やめておきます。練習を重ねて腰部が柔軟となれば自然に掌が地面
に付くようになります。(上層の気を吐き、下層の気を丹田に沈めます。)
この式は動作も呼吸(吐く)もひとつです。なお、この動作もさらに2〜3回
繰り返しても良いです。
戻る
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T.太極拳初歩健身運気法(その3)
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前号からの続きです。今回は第十五式から第二十一式です。今回で太
極拳初歩健身運気法は完結です。(^^ゞ 附図のアップが遅れております
が、もうしばらくお待ちください。m(__)m
第十五式(第十五図)
前式に続いて、身体を真っ直ぐに起こしながら、両手を胸の前で交差さ
せます。(X形)掌心は内に向け、右手が外で左手が内です。含胸拔背と
なり、膝をかるく曲げて腰を少し落とします。(気を上層に吸い入れ、下層
の気を圧して気貼脊背します。)
この式は一動作と一呼吸(吸う)です。
第十六式(第十六図)
(一) 前式に続いて、左手は外に捻りながら上に物を支える様に伸ばし
て、掌心を上に向けます。右手はそのまま下に向かって、腿の付け根の
辺りまで、按(押す)をします。この時掌心は下に向かい、指は前に伸ば
します。
同時に膝を伸ばして身体も伸ばします。(上層の気を吐いて、下層の気
を丹田に沈めます。)
(二) 次にまた、先ほどの十五式の形に返ります。つまり、両腕を胸の
所で交叉させます。ただ、今度は左手が外で右手が内です。含胸拔背と
なり、膝を軽く曲げて腰を少し落とすのは十五式と同じです。(気を上層に
吸い入れ、下層の気を圧して気貼脊背します。)
この式は二動作と二呼吸(吐くと吸う)です。
第十七式(第十七図)
(一) 前式に続いて、右手は外に捻りながら上に物を支える様に伸ばし
て、掌心を上に向けます。左手はそのまま下に向かって、腿の付け根の
辺りまで、按(押す)をします。この時掌心は下に向かい、指は前に伸ば
します。
同時に膝を伸ばして身体も伸ばします。(上層の気を吐いて、下層の気
を丹田に沈めます。)
(二) 次にまた、先ほどの十五式と同じ形に返ります。つまり、両腕を
胸の所で交叉させます。今回も左手が外で右手が内です。含胸拔背と
なり、膝を軽く曲げて腰を少し落とすのも十五式と同じです。(気を上層
に吸い入れ、下層の気を圧して気貼脊背します。)
この式は二動作と二呼吸(吐くと吸う)です。
第十八式(第三図)
前式に続いて、両手を内から外へと捻りながら前方へ伸ばし、手首から
下を前に垂らすような感じとなります。ちょうど第三式の時と同じです。身体
と膝はそのままです。(上層の気を吐いて、下層の気を丹田に沈めます。)
この式は動作・呼吸(吐く)ともに、ひとつです。
第十九式(第十八図)
前式に続いて、両手を外から内へと捻りながら胸に引きつけ、また胸の
ところで交叉させます。この時両手の掌心は内を向き、右手が内に左手が
外にあります。身体と膝はそのままです。(上層に気を吸い入れ、下層の
気を圧して気貼脊背します。)
この式は動作・呼吸(吸う)ともに、ひとつです。
第二十式(第十九図)
前式に続いて、両手の肘を左右に引きつけながら、両掌を腰の位置に
もってきます。掌心は上を向け、指は伸ばします。同時に膝を徐々に伸ば
して立ちあがり身体を真っ直ぐにします。しかし、ここではまだ真っ直ぐに
伸ばしきりません。(引き続き上層に気を吸い入れ、下層の気を圧して気
貼脊背を続けます。)
この式は動作・呼吸(吸う)ともに、ひとつです。
第二十一式(第二十図)
前式に続いて、両掌を少し持ち上げます。続いて掌心を翻して下に向け、
そのまま下に向かって按をします。(押す) 同時に前式からの動作を続け
て膝を伸ばして第一式の姿勢に戻ります。(上層の気を吐き、下層の気を
丹田に沈めます。)
第一式の元の姿勢に戻った後、しばらくこのままの状態を保って気血の
運行が元に戻るまで待ちます。
【注:この健身運気法(太極拳の架式や推手・大才履等もそうですが。)
をやった後には、気血の流通を促進させる為に、次の運動をお勧めし
ます。(第二十一図)
それはまず、足を肩幅に平行に開き、両膝を屈して馬歩となり、太極拳の
姿勢の口訣(虚霊頂勁・含胸拔背・鬆腰鬆胯・沈肩垂肘・尾閭中正等)を
守って、太極拳の起勢の形つまり、水中に浮いたボールを押さえるような
姿勢を保ったまま、足腰の筋肉を小刻みに上下させて、全身を100〜
200回震わせるのです。
次に今度は、その両腕を肩の高さで左右に伸ばし、指は伸ばしたまま
掌心は下に向けた状態で、足腰の筋肉を小刻みに上下させて、先と同
様に全身を100〜200回震わせるのです。
この様にすれば、全身の気血の流通を促進し、心身ともに快適と成って
大きな利益があります。】
以上で太極拳初歩健身運気法の解説を終わります。毎度の事ながら、
文章にすると長いですが、実際の動きは大変簡単です。しかも、ゆっくり
やっても五分もかからないものですから、太極拳修行者は身につけてお
くと便利かもしれません。
さて、いよいよ次回から、「太極拳中の気の呼吸及び運気法」の解説に
入ります。この解説をご覧になれば、呼吸によってどの様に気を取りこ
むかということが明確になると思います。ご期待ください。(^^ゞ
戻る
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T.太極拳における気の呼吸と運気法
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== 翻訳です。==
『太極拳において、初歩の段階での呼吸は専ら鼻によって、口は使いま
せん。普通に行う鼻から吸って口から吐くのとは異なります。技芸の高い
人は、胸腹中の気(中焦の気)を上下の二層(俗にいう先天の気と後天の
気)に分け、吐く時に上層の気(後天の気)を鼻から吐き出し、同時に下層
の気(先天の気)を丹田に降ろすのです。吸う時には、鼻から気を吸い入れ
て上層に満たし、同時に丹田の気を背中側に上げるのです。このような境
界を俗に「気通」と言います。凡そ、正宗の太極拳を練習してある程度の
段階に至った時には、均しくこの段階に達するはずです。
しかしながら、初心者は一日も早くこの状態を実現しようとあせってはなり
ません。あせると正しい拳式や姿勢の妨げになるからです。ですから最初の
うちは呼吸は自然に任せ、動作はゆったりと、全身をリラックスさせて気持ち
良く練習するようにした方が良いでしょう。もしそうでなく、最初のうちから無
理をして、呼吸を型に押しこめて気を丹田に沈めようとすれば、気は必ず本
来の正しい通り道をそれてわき道へ入り、下部に必ず痔疾や腸疝等の病気
が生じてしまう事になります。
ただし、既にかなりの段階に至った後には、気の呼吸をどの様に運用する
のか注意しておかなければなりません。もしその理を知らなければ、太極拳
の聖境に達する事が出来ません。十三勢行功心解の中に言う所の「能呼吸、
然後能靈活(よく呼吸する事が出来て後、靈活となる)」です。その意味は呼
吸と動作がお互いに打てば響くように感応する事です。吐くべき時に吐き、
吸うべき時に吸う、また吸えば動作は虚となり、吐けば実となるのです。これ
を体得して後、身体は自ずから靈活となります。そうでなければ、虚実が明ら
かにならず、太極拳を練習する眞諦は全く失われてしまう事になります。何故
なら、太極拳で最も注意すべきなのは虚実であるからです。
普通、老師が生徒に太極拳を教える時には、内外の二つに分けて教えます。
内部は呼吸で外部は拳勢です。しかし、往々にして外部(拳勢)のみ教えて
内部(呼吸)は教えない事が多いのです。なぜなら、これ(呼吸)を授けても、
うまく行えない場合には反って弊害となることが多いからです。ですから、そ
うなるよりは自然に任せておいて、練習を重ねて熟練した上で自らその理を
体得したほうがましだからです。決して教える側が故意に隠しているのでは
ありません。ですが、この書の目的は本来の常識を明らかにする事であると
思いますので、以下にその運用法を詳述してみます。
大体において、拳架を練る時には腕を伸ばして攻撃する時に息を吐き、
腕を斂めて防御する時には息を吸います。また身体が上昇する時には吸い、
下降する時には吐きます。「提」(持ち上げる)の時には吸い、「沈」(沈める)
時には吐きます。「開」(身体を開く)の時には吸い、「合」(身体を閉じる)の
時には吐きます。
拳架の繋ぎの部分、つまり移動しながら転身したりする時には、小呼吸を
します。小呼吸とは、呼吸を長くしないという事です。吐いたり吸ったりします
が、その中には停息の象も含んでいます。
推手の時には、按と擠は気を吐きます。【才履】と【才朋】は吸います。そし
て相手の攻撃を化す時には吸います。【才履】をされた時には自然の小呼
吸となります。この小呼吸とは即ち心を静めるために行います。心が静まっ
ていれば相手の行動をつぶさに把握でき、間違いがないからです。また、
もし按や擠等で連続して攻撃され、もう吸えないという状態になったら、吐く
ことに転じます。それは吸収した相手の気を四肢に分散する為です。ですか
ら、吐ききってもう吐くことが出来ないときは変化して吸い、吸い満ちてもう吸
えない時には変化して吐きます。(なんか当たり前の事を言っているみたい
ですが…。 (;^_^A )
次に大【才履】の時の呼吸ですが、【才閃】と靠と按は吐き、【才履】は吸い
ます。靠を受けた時には吸い、【才履】を受けた時には小呼吸にします。転身
して按をしようとしている時にも小呼吸です。その他の、歩を進めながらもい
まだ發勁に至っていない時には、均しく小呼吸を用います。何故なら、心を
静めて相手の動静を見極める沾黏勁をもたなければならないからです。
剣や刀や桿、散手の時の呼吸の運用もまた拳架を練る時と同様です。
即ち攻撃する時(手を出す)に吐き、防御する時(手を収める)に吸います。
また、身体を上昇させる時は吸い、下降させる時には吐きます。体を開く時
には吸い、身体を閉じる時には吐く、等々。
さて、内部の気の旋転の方法ですが、これには先天から後天へ向かうのと、
後天から先天に向かうのと二通りあります。
(一) 前から後に向かう(俗にいう先天から後天へ向かう)とは、即ち丹田
の気を下方に移動させ海底に至らせ、尾閭を起点として脊髄に沿って上行
させます。そして玉枕・天靈などの穴を経て、今度は下降して額・人中・喉結・
心窩・臍などを通って本来の帰処である丹田に帰ります。
(二) 後から前に向かう(俗にいう後天から先天へ向かう)とは、即ち丹田
の気を上方に移動させ臍輪に至らせ、心窩・喉結・人中・額などを経て、天
靈・玉枕などの穴に至らせ、脊髄に沿って下降させ、尾閭を通して海底に達し、
そこから上に向かって丹田に帰します。
これらの二つの気の旋転は反対のコースを取るものです。このような行気
の方法は、初学時においては甚だおぼろげでよく解らないものであるが、練
習を重ねていくと自ずからこのような境界に達する事が出来るものです。
以上の二種の気の旋転は、一人で練功する時だけでなく、推手など人と
手を交えて發勁する時にも、注意しておくべきものであります。そうでなけれ
ば、たとえ發勁の威力が大きくても、無駄に終わってしまうのです。
太極拳の技芸の高い者は、自らの内部の気の運用の習熟するばかりで
なく、相手の身体内の気の状態、即ち気が上昇しているか下降しているか、
或いは前にあるか後にあるか手を触れただけで分ってしまうものであります。
この様に精緻な功夫は初学者の理解できるところではありません。
さらに呼吸においては【ロ亨】哈(フン・ハ)の二字を自然に含むようになり
ます。(功力が深くなれば、鼻からのみでなく、口と臍をも使って呼吸するよう
になる。)技芸の高い者は、単練の時や対人練習の時に意識することなくこ
の二字が口をついて出る事になります。
その理由には3つのことが挙げられます。一つは、内気を伸びやかにし、
気の圧迫による内傷を受けないようにする為、二つ目は内勁をすべて透出
して滞留することがないようにする為、三つ目は敵を驚かせ慌てさせる為(敵
が驚き慌てふためけばその動作は散漫となり、精神は明瞭さを失い、進退
の機会を捉えられなくなり、防御が疎かになるので、その隙に乗じることが
出来るからです。)です。ですから、この【ロ亨】哈の二訣を用いる効用は大
変大きいと言えます。太極拳を学習する者にとっては必ず知っておかなけ
ればならないものです。
【ロ亨】は、大体において引化(相手の攻撃を無力化する)する時に用いま
す。(内気は吸です。)哈は、大体において拿發(関節技を仕掛けたり、發勁
したりする)の時に用います。(内気は呼です。)ですから乾隆舊抄本の太極
拳經歌訣に「拿住丹田練内功。【ロ亨】哈二気妙無窮。動分静合屈伸就。緩
應急随理貫通。」また、太極拳老譜の中に載っている「對待(推手のこと)有
往来。是早或是晩。合則放發去。猶如凌霄箭滋養有多少。一気哈而遠。口
授須秘伝。開門見中天。」これによって【ロ亨】哈の二字の妙用を知るべき
です。』
以上は陳炎林著「太極拳眞傳」の「太極拳中気之呼吸及運気法」という
項目の全訳(多少は意訳の部分もあります。(;^_^A )です。実は、以前私は
先天の気と後天の気の運転の仕方、つまり逆式呼吸による体内での気の
運行のやり方をこの本のこの項で読んだと記憶しておりました。ですから
十六号で「太極拳初歩健身運気法」を解説した時に、後にこれを翻訳すれ
ば読者の皆様にすぐにご理解いただけると考えておりました。
ところが、以上翻訳してみると、どうやら私の勘違いであったらしく、ここに
は逆式呼吸による体内における気の運行法があまり詳しく書かれてはいま
せんでした。(別の本で読んだみたいです。(^^ゞ)そこで、今現在私が理解
しているやり方を以下に紹介してみたいと思います。
ご存知のように太極拳は腹式呼吸を用いますが、腹式呼吸には二種類
有ります。ひとつは順式、もう一つは逆式です。なお、ここでいう腹式呼吸と
は呼吸時に下腹を大きく凹ませたり、膨らませたりする呼吸法のことです。
順式呼吸とは、息を吸いこんだ時に下腹を膨らませ、吐き出した時に下腹
を凹ませるという呼吸法です。逆式はその反対で吸い込んだ時に下腹を凹
ませ、吐き出した時に下腹を膨らませるというやり方です。
さて、太極拳を健康法として用いる時には順式を用いますが、武術として
用いる時には逆式を用いなければなりません。ここでは武術としての太極
拳に用いる気の運転法を解説しますので、全て逆式呼吸ということで理解
してください。
また、先天の気と後天の気についてですが、後天の気とは我々が呼吸し
ている大気だと理解してください。先天の気は実体のない想像上の物と考
えておいた方が良いでしょう。その通り道としては、奇経八脉の内の任脉と
督脉を用いるので、その経脉の道筋などを理解しておいたほうが良いで
しょうが、そんなに精緻にルートを把握する必要はないように思われます。
もっと大雑把で良いと思います。
では、解説していきます。先ず、身体の中(胴体部分)を上下前後に四つ
に分けて考えてください。つまり、肺のある胸部と丹田のある腹部(これで
前の上下)、腎臓のある背中側の腰の部分と大椎穴(二つの肩甲骨の中
間に位置するツボ)のある背中の上部(これで後の上下)です。
さて、逆式呼吸をしてみましょう。息を吸いこみながら下腹を凹ませます。
この時には前の上の部分、つまり肺のある胸部に後天の気(大気)が充ち
ることになります。次に息を吐き出すと同時に下腹を膨らませます。ここか
らは観念的なものになりますが、いままで胸部にあった後天の気が丹田に
下りてくると想像します。そしてここで後天の気は先天の気に変化します。
(要するに想像上の圧力)
次にまた息を吸いこみながら下腹を凹ませます。すると、下腹を凹まされ
た事により、今まで丹田にあった先天の気は押しやられて腰背部に廻りま
す。(気貼脊背)続いて、息を吐き出すとともに下腹を膨らませます。すると、
上記の気の取り入れは続いているわけですから、順々に押し詰まってきて
いる気に圧迫されて、いままで腰背部にあった先天の気はさらに背中の
上部に移動します。(背中の上部に移動したと同時に大椎穴から二手に
分かれて肩や両腕を通って勁とともに打ち出されます。)
要するに、息を吸いこんだ時、下腹を凹ますことによって、いままで丹田に
あった先天の気を背中側に圧迫して押しつけるのです。この操作を「気貼
脊背」といいます。さらに続けて、息を吐きながら下腹を膨らませるというこ
とは新しい気が丹田に入れられ、さらに気を圧迫する事になり、今まで腰背
部にあった気がさらに上部に移動させられる事になるのです。
つまり、気は胸→下腹→腰背部→大椎穴→両肩→両腕→掌と言う順番で
移動され打ち出されるわけです。ルートで言うとなんか悠長な感じがします
が、気は順順に圧迫されて充填しているわけですから、簡単な動作、つまり
息を吐きながら下腹を膨らませて気をストッと落とすだけで、掌から打ち出
される事になります。ほんの一瞬の出来事です。發勁の時は須らくこの呼
吸法を用います。
上記の理屈が完全に理解でき、操作に習熟すれば、先の号で紹介した
「太極拳初歩健身運気法」の価値がよく分っていただけると思います。
なお、一般に太極拳では順式呼吸から修錬を始めて、逆式はやりません。
これは真実の方法を隠しているのではなく、いきなり激しい逆式呼吸をする
と呼吸器官を傷つける恐れがあるので、最初は順式によって呼吸器官を鍛
錬する必要があるからです。ですから、呼吸器官がある程度強固になって
きたら、このやり方(逆式)を修錬する必要があります。
如何でしょうか?分ってみると「なぁーんだ!!」と言うような事でしょう。
でも、なかなかここまで解説してある太極拳の本はないんじゃないかな?
とも自負しておりますが…。(最近、本屋で太極拳関係の本の立ち読みをし
ていないので、書いてある本があったらゴメンナサイ。(^^ゞ)
以上、逆式呼吸による先天の気と後天の気の運転法を解説してみました。
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