6・25(朝鮮戦争)前後に韓国軍・警察などが起こした民間人殺害事件で、被害者らの損害賠償請求を認める判決が相次いでいる。
釜山高裁は25日、「居昌事件」の犠牲者遺族が提起した訴訟で、一審判決を覆し原告勝訴の判決を下した。また今月15日には、いわゆる「江華島事件」の遺族10人に対し、5億3000万ウォン(約4000万円)の賠償請求を認めるソウル中央地裁判決が下っている。
江華島事件とは1951年、右翼団体が江華島の住民に対し「北朝鮮に協力した反逆者」という疑いをかけ、集団虐殺した事件のこと。さらに10月には「全南地域国軍11師団事件(パルチザン討伐作戦中に起きた韓国軍の民間人殺害事件)」の遺族137人に対し、21億ウォン(約1億5800万円)の賠償請求を認める一審判決が下った。加えて昨年6月以降、韓国各地のいわゆる「保導連盟事件(保導連盟=思想転向した元共産主義者の団体。朝鮮戦争開戦後、かつて共産主義活動に関わっていた保導連盟員が多数殺害された事件)」をめぐっても、賠償請求を認める判決が続いている。
6・25時の民間人殺害事件に対する国家賠償訴訟では「消滅時効」問題が最大の争点になる。国家の違法行為によって生じた損害に対し賠償を受け取るためには、事件発生から5年以内、違法行為を知った日から3年以内に提訴しなければならない、というのが消滅時効だ。2008年に一部の「居昌事件」遺族の損害賠償請求訴訟を大法院(最高裁に相当)が棄却したのも、まさにこの消滅時効を厳格に解釈したからだ。
しかし過去史委員会が事実関係を調査し、真相調査を発表すると、昨年から裁判所の判例が大きく変わった。
それらの判決では、過去史委の処理結果が発表された時点を消滅時効の出発点(違法行為を知った日)としている。遺族は真相をきちんと知ることができなかったことから、国が「消滅時効が経過した」とするのは不当だ、というのが最近の判例の傾向だ。
大法院は昨年6月、6・25当時左翼の疑いをかけられ銃殺された蔚山保導連盟員の遺族に対し、原告敗訴の原審判決を破棄して「国が処刑者の名簿などを3等秘密に指定し、真相を隠蔽(いんぺい)した後、今になって『賠償する時効は過ぎた』というのは不当」とする判決を下した。大法院は当時「過去史委の調査が終わった07年11月、遺族はようやく事件の全貌を知ることができた」と判断した。
パルチザンに食糧を提供した疑いで民間人が集団殺害された「聞慶事件」をめぐっても、犠牲者の遺族が起こした損害賠償請求訴訟で、大法院が昨年9月「真実を隠し真相究明の努力すら怠った国が、消滅時効を理由に補償金の支払いを拒絶するのは著しく不当」という判決を下した。
過去史委は10年12月、6・25当時民間人が犠牲になった事件6742件について真相究明を行ったと発表。この先も関連訴訟や国家賠償額が大幅に増える可能性が高い。