つむぐ:2012・11 桃浦 「水産業復興特区」活用し漁業再開 サラリーマンの漁師に /宮城

毎日新聞 2012年11月11日 地方版

カキの種付けの準備を進めながら、「1人じゃ浜に残らなかった」と話す渡辺金一さん=石巻市桃浦で12年10月
カキの種付けの準備を進めながら、「1人じゃ浜に残らなかった」と話す渡辺金一さん=石巻市桃浦で12年10月

 震災発生直後の昨春、岸壁は地盤沈下して海水があふれ、浜全域はガレキに埋め尽くされていた。自宅も漁具も失った漁師たちの平均年齢は60代。「借金して子供に迷惑をかけてまで漁はできない」。多くの漁師たちがそう考え、あきらめかけた。しかし、漁の断念は集落の消滅を意味する。苦悩する中に浮上したのが特区構想。集落の存続をかけ、民間資本を活用して漁業を再開する道を選んだ。

 しかし県漁協は「経営が傾けば企業は撤退し、漁場が荒れる」などと特区構想に猛反発し、県と漁協との対立は深まった。それでも浜の漁師は黙々とガレキを撤去し、なけなしの資金を出し合って漁具を買いそろえるなどして準備を続け今年8月、15人で「桃浦かき生産者合同会社」を設立。漁師らと民間会社が共同出資している。

 「生活のため」「仲間に誘われたから」「成り行き」「集落再生のため」−−。思いは一枚岩ではないが、漁師らは“サラリーマン”の道を選び、浜に残った。石巻市中心部や仙台市などの仮設住宅や賃貸住宅から当面「通い」での漁を続けるつもりだ。

 10月下旬、合同会社の代表社員として漁師を率いる大山勝幸さん(65)は、浜に建てたプレハブ番屋の壁に、震災前の航空写真を飾った。海岸には漁船がズラリと並び、山際にはビッシリと民家が張り付いている。

 「この写真を見ると『こんな集落だったあ』と震災前を思い出すでしょ」。大山さんは写真を眺めながら目を細めた後、「もう後戻りできない」と、引き締まった表情でつぶやいた。【宇多川はるか】

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 ■ことば

 ◇水産業復興特区

 漁業法に基づき地元漁協に優先付与されてきた漁業権(一定水域で特定漁業を一定期間独占的にできる権利)を、民間企業に開放する。震災で壊滅状態になった水産業の立て直しを図るため、村井嘉浩知事が昨年5月に提案。13年9月の漁業権切り替え以降の活用に向け、県内で唯一、桃浦が特区申請する予定。地元漁業者らが共同出資した新会社「桃浦かき生産者合同会社」には、仙台市の水産物専門商社「仙台水産」も出資・参画している。

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