日本維新:「脱原発」後退がっかり 橋下氏、被災地で演説
毎日新聞 2012年11月27日 12時05分(最終更新 11月27日 13時28分)
日本維新の会の橋下徹代表代行(大阪市長)が27日午前、福島県会津若松市で街頭演説を行った。原発事故の被災地・福島で街頭に立ち、被災者に語りかけたのは初めて。集まった有権者からは期待する声も聞かれたが、維新の「脱原発」路線が旧太陽の党と合流後に後退したことに「がっかりした」「脱原発の数値目標を示してほしかった」と話す人も目立った。【川崎桂吾、乾達】
「原発はなくなってほしい。だから原発政策について聞きに来ました」
小雪舞い散る27日午前9時半、会津若松市・飯盛(いいもり)山のふもとにある維新陣営の事務所前。会津坂下町(あいづばんげまち)からやってきた農業の男性(72)は寒さに体をすぼめながら、橋下氏が登場するのを待っていた。「でも(戊辰(ぼしん)戦争中、飯盛山で自決した)白虎(びゃっこ)隊が見守る場所で『維新』というのも何か複雑だね」
陣営は集まった有権者を「800人」と発表したが、記者からは200〜300人に見えた。「会津を敵対視しているわけじゃありませんよ」。そんな「つかみ」から話を始めた橋下氏は冒頭、旧太陽との合流で「原発ゼロ」の表現がなくなったことを釈明した。「(マスコミは変わったと指摘するが)なーんにも考え方は変わっていません」「どの政党も、具体的なプランは持っていないんです」
身ぶり手ぶりの演説は17分間。「演説はうまいけど、あんまり言うことは他の政治家と変わんねえな」。耳を傾けていた会津若松市内の女性(72)はぽつりと言った。原発政策については「選挙目当てでしょ」と冷ややかだった。
市内には、警戒区域内の同県大熊町から避難した住民2850人が暮らす。借り上げ住宅で避難生活を送る鈴木文雄さん(60)は橋下氏の演説に「総論で細かいところに踏み込まなかったのが残念。脱原発の数値目標を示してほしかった。福島への対応の話もなく、大都市と地方の温度差があるのかもしれない。実行力を強調していたので、もう少し見てみないと分からないが、期待はしたい」と話した。遊説場所から約1キロ離れた仮設住宅で暮らす60代女性は「福祉などが削られないか不安。実行力の裏返しで、何をするか分からない怖さがあり、冷静に見極めたい」と語っていた。