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冬のセールで三越伊勢丹とアパレル各社が全面戦争?

Business Journal 11月27日(火)7時32分配信

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冬のセールで三越伊勢丹とアパレル各社が全面戦争?

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冬のセールで三越伊勢丹とアパレル各社が全面戦争?
伊勢丹新宿店(「足成」より)

 三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長がアパレル各社と対立し、孤立を深めている。事の発端は、大西社長は冬物バーゲンの後倒(あとだお)しを主張。これに対しアパレル各社は、夏物バーゲンについては大西社長の意向に沿ったが、冬物についてはノーを突きつけた。結果、年明け早々の1月2日からバーゲンに突入する。

 これに怒った大西社長は「自主企画商品で対抗する」と言い出した。通常のメーカー品に比べて1〜2割ほど価格を抑えた、自主企画による冬物衣料の品揃えを前年の3倍に増やし、12月19日から順次、店頭に並べる。同社は冬物セールを例年より2週間以上、後倒しして、来年1月18日から始める。さらに、その後の張り手が強烈だった。高級製造小売り(SPA)に進出するというのだ。

 自主企画商品の売上高総利益(粗利益)は30%代後半。メーカーのブランド品より10ポイント高いのが魅力だ。三越伊勢丹は冬物バーゲンを後倒しする2013年1月の売上高について「前半は1割近く減少するが、全体では、前年並み」と強気の見通しを明らかにしている。

 ほかの大手百貨店は例年通り1月2日から冬物セールを始める。高島屋は、夏は一部の売り場を除いて例年より2週間後倒ししたが、冬は従来通りとする。初売りと冬物セールの同時期の開催は消費者に広く浸透しており、冬物セールを遅らせると集客に影響が出ると判断した。

 大丸松坂屋百貨店も1月2日からセールを始める。三越伊勢丹HDと歩調を合わせて夏のセールを2週間後倒しした東急百貨店も、冬物セールは例年通りの態勢に戻す。この結果、大手百貨店では三越伊勢丹HDだけが冬物セールを1月18日にスタートさせることになった。大西社長は伊勢丹新宿本店など基幹店3店で、正月の福袋を例年より1割増やすことによって一定の売り上げを確保する防衛策をとる。

 こうした大手百貨店とアパレル各社の主導権争いは、今に始まったことではない。

 バブルが崩壊する前までは、夏と冬のセールは現在よりも2週間遅く始まっていた。バブル崩壊後、流通の業界地図は劇的に変化した。ショッピングセンターや駅ビルなど新しい商業施設が誕生し、ユニクロなど製造小売りといった強力なライバルが登場した。

 ショッピングセンターは夏のセールを7月初頭に始める。ユニクロなどは1年を通してセールを行う。これに対抗して百貨店はセールを前倒しして、夏は7月、冬は12月初頭からセールをするようになった。

 セールの前倒しは、百貨店業界に決してプラスをもたらさなかった。夏物の需要の高まる7月、冬物が最も売れる12月に大幅に値引きしてしまうため、利益率が低下。自らの首を絞める結果を招いた。

●伊勢丹がユニクロ化。その公算は?

 百貨店でのファッション関連商品の価格の決定権を持つのはアパレルだ。セールについても時期や下げ幅をアパレルが決める。そもそも百貨店は場所貸し業であり、アパレルから売り上げにスライドした家賃をもらっていた。ところが三越伊勢丹の大西社長は「夏物衣料品のセールを盛夏の7月1日から始めるのは商売上、おかしい」と主張して、セールの2週間の後倒しを提案した。アパレル大手のオンワード樫山が同調して、夏のセールは例年より2週間後れで始まった。

 しかし、大手百貨店の夏のセールは低調に終わった。大丸松坂屋百貨店は例年通り7月1日から、高島屋や阪急阪神百貨店は1日と13日からの2段階方式でセールスを打った。

 結局、7月の売上高は三越伊勢丹だけでなく、大丸松坂屋、そごう・西武、高島屋、阪急阪神と、どこもかしこも前年実績を下回り共倒れ状態となった。

 7月1日からのセールの場合、前週の売り上げは極端に下がる。2週間後ろ倒しした結果どうなったかというと、買い控えが1週間から3週間へと延長されただけに終わった。

 セールの後倒しは消費者を混乱させただけで、百貨店の売り上げは減少した。プライスリーダーのオンワード樫山が、冬物のバーゲンセールを例年通り年明けの1月2日から始めると決定。初売り&福袋と同時に始まる冬物のセールは消費者に広く認知されているので、例年通りやるべきだとした。オンワード樫山の決定にほかのアパレルも追随。三越伊勢丹を除く大手百貨店は1月2日からのセールで足並みを揃えた。

 そこで、大西社長はSPAと呼ばれる製造小売りの展開に来年から踏み出すことにした。将来はSPAを利益の源泉にするという。

 SPAとは、自社で商品を企画、生地を調達したうえで国内の縫製工場や織物メーカーに生産を委託し、商品を全量買い取る。ユニクロの成長力の原動力となった手法だ。

 三越伊勢丹は、これまで衣料品の大半をアパレルメーカーからの供給に頼ってきた。売れ残った商品は返品できるため、在庫を抱えるリスクは小さかった。高級SPAを導入すれば、全量買い取ることになると在庫リスクは大きくなる。また、自社生産に乗り出すことで、これまでは二人三脚でやってきたアパレル各社とはライバル関係になる。

 同社げは11年度、2350億円を売り上げた。売り上げ世界一の百貨店、伊勢丹新宿本店の全面改装(13年3月に終了予定)を陣頭指揮してきたのが大西社長だ。「ファッションの伊勢丹として、情報発信力を取り戻す」と語る同氏は、百貨店業界のファッションリーダーを自負する。

 アパレルメーカーを敵に回すことになる大西社長の壮大な賭けは、うまく行くのだろうか。
(文=編集部)

最終更新:11月27日(火)7時32分

Business Journal

 

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