中国公船による沖縄県・尖閣諸島の領海外側にある接続水域での航行が止まらない。２３日まで実に３５日連続。挑発的な行動の真意は何なのか。専門家は、狙いが中国海軍による軍事予算獲得である場合、尖閣周辺の航行は来年３月の全国人民代表大会（全人代＝国会）まで延々続くと警告する。
第１１管区海上保安本部（那覇）によると、２３日に接続水域を航行していたのは「海監１５」など４隻。中国当局の船が同諸島周辺を航行するのは１０月２０日以降、３５日連続となった。
接続水域での航行を続ける狙いについて、中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「海軍の訓練の意味合いが強い」とみている。
「尖閣周辺では南京軍区の東海艦隊、済南軍区の北海艦隊の船が交互に展開している。両艦隊により、有事における編成訓練を実施しているとみられる。また、接続水域に入って日本の海上保安庁が何分で発見するかなど、データを蓄積しながら日本側の防御態勢を正確に把握しようとしている」
『国防の常識』（角川学芸出版）などの著書がある元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏は、中国側の行動から海軍の強い不満を読み取った。
「共産党大会が終了して航行もやめるかと思われたが、いまだに続いている。人事で冷遇された海軍の不満はかなりのもの。せめて予算を多く確保するためには危機をあおるしかない。長ければ来年３月の全人代まで、少なくとも予算折衝が大詰めとなる２月までは接続水域内での航行を繰り返すだろう」
中国では中央軍事委員会の制服組トップとなる副主席ポストの１つを空軍が獲得。空軍の存在感が増すなか、影が薄くなった海軍は目立った行動を続けないと、人事だけでなく予算でも冷や飯を食わされる。
長期戦は日本側にとっても厳しいが、近いうちに意外とあっさり中断する可能性もある。前出の宮崎氏が次のように分析する。
「中国側は日本の総選挙の行方を気にしている。挑発的な行動は自民党を利することになり、中国に対して強硬なタカ派の安倍晋三自民党総裁がさらに勢いを増す。安倍政権の誕生をにらみ、自民党を勝たせ過ぎるのはまずいと判断すれば、総選挙の投票日前に中断することもある」
挑発行動は選挙戦の情勢によってストップするのか。それともクリスマスや正月も関係なく来年まで続くのか。