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国際
【正論】東京基督教大学教授・西岡力 拉致を「人気取り」に利用するな
≪「合同調査委」も時間稼ぎ≫
杉山局長が帰国後、拉致被害者の家族会に今回の協議内容を報告した21日夜、今度は、野田首相が10月下旬から11月にかけて、政権中枢に近い関係者を第三国で北朝鮮に接触させ、被害者の安否に関する合同調査委員会を作ることを提案した、と報じられた。合同調査委員会も、小泉純一郎政権時代に北朝鮮側が提案してきてわが国が拒否した罠の一つである。
拉致を行ったのは北朝鮮で、現在、被害者がどのような状況にあるか知っているのは北朝鮮だ。わが国は被害者であり、拉致の全貌を知る立場にない。合同調査は、北朝鮮の時間稼ぎと責任転嫁に使われるだけで、被害者救出の障害になるというのが当時、わが国がはねつけた理由だ。野田政権が提案したのであれば、許し難い。
野田政権は2つの報道とも事実でないと否定したものの、いずれも政府関係者を情報源と記しており、完全に無視することはできない嫌な感じを関係者に残した。
10月26日付の本欄で筆者は次のように警告している。〈野田首相はしかし、松原(仁)氏(拉致問題担当相)を外した別ルートで北朝鮮の統一戦線部と接触したという。拉致を棚上げにし戦没者遺骨問題などで日本の支援や制裁解除を狙う謀略機関である。…圧力をかけつつ、拉致被害者の帰還などを実現させた場合のみ、支援や制裁解除で応じる「行動対行動」を貫くことが対北交渉の鉄則だ。…人気取りの次元で拉致問題を利用するのなら、野田政権は拉致を軽視したという批判のみならず、国民の命と国の主権を蔑(ないがし)ろにしたとの非難をも浴びるだろう〉と。
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