【東京】政権交代の公算の大きい衆院選を来月16日に控えて、2人の主要首相候補は経済をどう再浮揚するかで立場の違いを一段と鮮明にしている。
自民党の安倍晋三総裁は週末の遊説で、2、3週間前の批判が強かった経済・外交政策上の見解を和らげたが、低迷している景気は大胆な金融緩和と公共事業によって浮揚できるとの主張は続けた。これに対し野田佳彦首相(民主党代表)は25日のテレビ番組で、安倍総裁の見解は「危険だ」と述べた。その上で、政府債務を著しく膨らませることなく、グリーンエネルギー分野などに集中することで経済成長を促進すべきだと強調した。日本の債務は先進国の中で最大だ。
世論調査の結果によると、有権者の過半数が自民、民主どちらの政党も支持していないため、他の一連の政党は連携や支持者獲得に懸命になっている。つい最近旗揚げした政党には「減税日本・反TPP(環太平洋連携協定)・脱原発を実現する党」という政党もある。
衆院選は2011年3月に発生した東日本大震災以降初めての国政選挙になるが、来月16日の投票を控えたこうした混乱は、日本の抱える問題がいかに複雑か、その問題への対応でコンセンサスに到達することがいかに難しいかを浮き彫りにしている。
選挙で第1党になる公算が大きいとみられている安倍総裁率いる自民党は、デフレ脱却と経済成長促進のため日銀にもっと強い措置を講じるよう改めて要求した。ただし安倍総裁の発言は、日銀に対する政府の影響力の大幅拡大や日銀による国債引き受けといった過去の発言と比べると後退した。
安倍総裁は25日の討論番組で、「インフレ期待を高めるため、日銀は緩和し続けるという強い意思を示す必要がある」と述べた。また、「無制限の」緩和と2%のインフレ目標の設定を求める同氏の主張が市場で円高是正に役立っていると自賛した。
21日公表された自民党の政権公約では、「政府と日銀の協力強化」のため、中央銀行の独立を保証している日銀法の改正を検討するとしているが、安倍総裁は最近、この選択肢をトーンダウンし、代わりに日銀が独自に一段の緩和に踏み切り、物価と同様に雇用を拡大する措置を講じるよう求めた。
安倍総裁は、「日銀法が改正される場合、雇用という実体経済にも責任を負ってもらう」と語った。
安倍総裁は24日の別のテレビ番組で、政策目標をどのように履行するかは日銀自身に委ねられると述べるにとどまった。これは、日銀による建設国債購入を求めた従来の発言を軌道修正したものとみられる。
これに対し野田首相は25日のテレビ番組で、安倍総裁が後退したと指摘し、その発言が「ぶれている」と批判した。
野田首相は、安倍総裁が当初建設国債を大量発行して、日銀にそれをすべて引き受けさせる計画だと受け止められる発言をしたが、その後国債は市場を通じて購入されると語り、さらには何をするかは日銀に決めさせると語ったと指摘、同氏がトーンダウンしたと批判した。
一方、いわゆる活力ある「第3極」の結成を目指す他の主要政党は足場固めに四苦八苦している。石原慎太郎前東京都知事が今月合流し新たに代表に就任した橋下徹大阪市長の設立した「日本維新の会」は24日、衆院選の公認候補者を150人弱とすると述べた。これは、当初目標としていた候補者数を100人程度下回る。
観測筋は、石原、橋下両氏は合流のため、貿易や原子力問題といった主要政策で妥協しなければならなかったと指摘した。維新の会と合流する見通しだった別の政党は今週末、政策上の差異で合流できなかったことを明らかにした。
野田首相が2週間前、衆院解散・総選挙実施を表明して以降、14ほどの政党が総選挙に向けて乱立する状態になっている。