「新卒で入社し、給料をもらって、多くを学ばせていただいた会社です。小売業界の特性上、また、企業として利益をあげて成長する為に、仕方がない面もあります」
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5年以内に同期入社の8割超が、主に体や心の異常から辞めていく、という人材「排出」企業・ユニクロ。レジのリードタイムから挨拶の言葉ごとのお辞儀角度まで事細かに決める徹底したマニュアル化で、人間が工場の機械のように精密に動くことを求められつつ、過酷な長時間拘束と「絶対なくならない」サービス残業で実労働が300時間を超える月も。「有休は毎年20日ずつ捨てる」という休みなき環境で、肉体的に疲弊していく。上からは「内部監査」、下からは「ホットライン」の監視ストレスで精神的にも疲弊。昨年まで4年超にわたって在籍し、複数店舗で店長も務めた元社員に、「そこまでやるから儲かるのか」という納得の仕組みについて、詳細に聞いた。
【Digest】
◇「絶対になくならない」サービス残業
◇「ホットライン」という密告制度
◇「内部監査」のための仕事
◇お辞儀の角度までマニュアル化
◇痩せるか、太る
◇店長の1日(早番、11時オープンの場合)
◇子育て店長「聞いたことない」
◇3年目に店長就任
◇中国は手を挙げれば…
◇合言葉は「エンター押した?」のべルリッツ
◇非店長の社員が店を支える
◇FCを目指すか、店長を続けるか
◇CSのヘンな競争
◇店長は年収550万円
◇「SVは貧乏クジだ」
◇「絶対になくならない」サービス残業
私は大学卒業後、新卒採用で入社しました。同期は約400人いましたが、3年目には既に半分以上が辞めていて、5年目には50人残っていないくらいになっていました。つまり、5年離職率は8割超にもなります。他の代は分かりませんが、大差あるとは思えません。
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「サービス残業は、絶対になくならない。これは賭けてもいい。」 |
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辞める人は多いですが、「人材輩出企業」とは到底言えません。次の仕事で活躍している話はあまり聞かないし、ステップアップで前向きな理由から辞めて行くわけではなくて、「体や心を壊して」という辞め方が圧倒的に多いからです。体調不良や鬱で何カ月も休職する人が、知っている範囲でも、同期で10人はいました。「えっ?この人が?」っていう意外な人が倒れちゃう。
まず、サービス残業を含め、拘束時間が長いんです。サビ残は絶対になくならない。これは賭けてもいい。やらないと店が回らないんです。現場の実態としては、午前11時オープンの店で早番だと、朝8時には出勤して、閉店が21時なので、だいたい21時半までは現場にいます。つまり、1日14時間拘束がざらにある。
店長の評価者にあたるSV(スーパーバイザー)に何か言われたとき、店のことは全て店長が把握していなければいけないルールなので、部下から聞く二度手間の時間を作るよりも、自分で現場にいて把握したほうが効率がいいんです。
17時半が定時ですが、PC上で退勤ボタンを押してから、普通に仕事を続けます。月の労働時間が上限240時間と決められていて、超えると始末書を書かされる。まともに21時半までつけたら毎日4時間ずつ残業になってすぐオーバーしてしまうため、自分で打刻時間を調整します。調整できる仕組みになっていて、「239時間59分」で出す社員もいます。
実際には11~12月の繁忙期など、普通に実労働が月300時間を超えますので、時給を計算したら、店長でも700円台でした。店長になりたて(=「S2」ランク)だと額面で30万円台には乗らず、手取りだと25万円前後。これを320時間で割ったら、781円になります。下手するとアルバイトより安い。もっとも、ボーナスが別にあるわけですが。
外のカフェに一回ふらっと行ってから戻ってきて、ボランティアとして働く店長もいます。SVとしても「自分が通ってきた道」なので、見逃すしかない。発見したらSVの上司にあたる「リーダー」に報告しなきゃいけないルールなので、知っていても、見ないふりをする。会社としても、分かっていて黙認しています。打刻時間を調整できる仕組みになっていますし、そもそも有休を消化すると店が回らなくなる業務量が設定されていますから。
有給休暇は権利ではなく「努力目標」とされ、従って、消化しないのが当たり前。半年で10日ずつ貯まって、貯められる上限の40日間に張り付く3年目からは、ほとんどの社員が半期で10日ずつ有休を捨てているのが実態です。有休を使っても店が回る業務量に設定するのが会社の義務ですが、実際には有休を全員が消化すると店が絶対に回らない。そのあたりのコンプライアンスは、全くできていません.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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