特集ワイド:訂正続き、信頼失墜 放射性物質拡散予測地図 「最悪」想定、もっと公開を

毎日新聞 2012年11月26日 東京夕刊

 「最悪の事故を想定してほしい」。新潟県の泉田裕彦知事は先月、規制委に予測のやり直しを求めた。今回の予測は福島第1の事故と同程度、原子炉内にある放射性セシウムの2%程度が放出されたとの想定だが、86年のチェルノブイリ原発事故では約30%が放出された。元原子炉格納容器設計技術者の後藤政志さんは「水蒸気爆発やベント(圧力低下操作)の失敗によって、福島第1では起きなかった格納容器の爆発が起きれば、想定よりはるかに大量の放射性物質が出る」と危惧する。

 泉田知事のみならず「最悪の事態」への周辺自治体の関心は高い。規制委がネット上に公表したグラフを見ると、柏崎刈羽の東1キロで累積被ばく量は約7万ミリシーベルトと致死量に達する。4キロでも約1万ミリシーベルトだ。前述のように年間262位の値なのに、だ。5キロ圏内には柏崎市、刈羽村の計約1万6500人が住む。村の担当者は「これだけ高いと外部から(救援に)来られるのか疑問。村内で相談するが年間1位の値や、季節ごとのデータも知りたい」と訴える。

 規制庁は「試算条件の影響で近距離は高い値が出た」と言うが、他の原発も1キロで約5000〜3万ミリシーベルト。東海第2原発のある茨城県東海村は「距離別の線量公表は1原発で1方位だけ。全方位で知りたい。100ミリシーベルト以下の地点も知りたい」と規制委に要望中。拡散予測に詳しい大原利真・国立環境研究所地域環境研究センター長は「今回の予測法は簡易。専門家の支援を受け、より高度な方法で計算すべきではないか。地域住民に大きく影響するので、多くの情報を分かりやすい形で示すことが重要です」と話す。

 規制委は予測の全データを公開すべきだ。

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