特集ワイド:訂正続き、信頼失墜 放射性物質拡散予測地図 「最悪」想定、もっと公開を

毎日新聞 2012年11月26日 東京夕刊

放射性物質の拡散予想図(修正版)
放射性物質の拡散予想図(修正版)

 一方、100ミリシーベルト地点が原発から「8・7キロ(柏崎市内)」の北東方向の場合、風が吹いたのは年間約300回。従って1地点につき300通りの試算値が存在する。やはり上位261の数値を省き、262位が100ミリシーベルトとなる地点を選び出した。

 ここにカラクリがある。総数960の262位は全体の中間より上だが、総数300の中の262位は下から約1割の低さだ。この方法を用いる限り、風の吹く回数が少なければ少ないほど高い試算値が無視される割合が大きくなる。261回以下だと全ての試算値が無視される。事実、年間180回しか風の吹かない大飯原発(福井県)の東南東方向は100ミリシーベルト地点が地図上にないのだ。

 このデータ処理法は旧原子力安全委員会の指針に記されており、無視の対象は試算値の上位3%。今回は8760×0・03=約261とした(試算対象の方角に風が吹かない時刻は線量ゼロとみなすが、形式上の計算回数は1地点につき8760回のまま)。

 「風の回数が少なければ放射性物質が遠くまで飛ばないというわけではない。少ない方向で防災計画が不要との印象を与えるのは問題です」。山中さんはそう語る。

 試算値1〜261位は非公表だが、1位を用いた場合の100ミリシーベルト地点の距離は、予測地図に付随する資料の中にごく小さく「すそ値」として記されている。しかも16方位中1方位のみだ。ちなみに柏崎刈羽原発の東方向は88・1キロ。地図に示された40・2キロ地点の2倍以上の距離だ。

 16方位で261の試算値を除くと合計約4000、全体の半分弱を無視することになる。規制委の事務局・原子力規制庁は「いろいろな価値観があると思うが、今回は旧原子力安全委の指針に従った」と説明するが、大気の拡散予測などを手がける民間研究機関「環境総合研究所」(東京都品川区)顧問の青山貞一さんは「極端な値だけを除いたとは言えず、高濃度の試算値を意図的に切り捨てたとしか思えない」と批判する。

    ■

 他にも疑問がある。

 一つの発生源から出た放射性物質は風に乗って扇形に広がるが、その濃度は扇の中心線上で高く、端では低くなるのが普通だ。ところが規制委は中心も端も同じとみなし、平均濃度で試算した。「中心の線量を高く計算するのは保守的(安全重視)過ぎる」との理由だが、「平均を使うことで、本来より低い値で試算している」と青山さん。規制庁自体、中心線の放射線量は「試算に使った平均値より3〜4割高い」と認める。こちらで計算すれば100ミリシーベルト圏はさらに広がったはずだ。

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