石川・志賀原発:放射性物質拡散 100ミリシーベルト以下も明示して IAEA判断基準、県内地域超えずも予測望む声 /富山
毎日新聞 2012年10月25日 地方版
原子力規制委員会が24日に公表した北陸電力志賀原発(石川県志賀町)からの放射性物質の拡散予測地図によると、県内では国際原子力機関(IAEA)が定める避難の判断基準(7日間の被ばく線量が100ミリシーベルト)を超える地域はなかった。行政の防災担当者は「一つの参考資料にはなる」とする一方、福島原発事故ではそれ以下の被ばく線量でも居住を制限していることから、「100ミリシーベルト以下の拡散予測も示してほしい」との声が上がった。【大森治幸】
志賀原発の予測地図ではIAEAの避難基準に達する最も遠い地点は、石川県羽咋市内にある同原発の南南西19・6〜20・2キロ地点だった。しかし、国は福島原発事故後、1年間の被ばく線量によって立ち入りができない「帰宅困難区域」(50ミリシーベルト超)や一時帰宅できる「居住制限区域」(20ミリシーベルト超〜50ミリシーベルト以下)など3区域を設定し、居住を制限している。
このため、志賀原発から30キロ圏内に一部地域が含まれる氷見市の地域協働課は「今回のシミュレーションは、三つの避難区域の基準とマッチングしていない」と指摘。「100ミリシーベルトにかからなかったからといって安心している訳ではない」と強調した。堂故茂市長も「100ミリシーベルト以下の拡散データが示されておらず、委員会ではさらに調査を進めてほしい」とするコメントを発表した。
また、原子力規制委員会は原発事故が発生した際、住民の避難対策などを充実させる地域を30キロ圏に拡大することなどの対応策を定めた「原子力災害対策指針案」をまとめた。これによって、富山県でも氷見市が30キロ圏に入ることから、県や市は来年3月までに防災計画をまとめなければならない。計画策定作業が難航する行政を尻目に住民独自で避難について考える動きも出てきた。
同市八代地区では「高齢者の足に」と、コミュニティーバスを住民有志で運行している。このほど、避難時にもこのバスを活用する方針を固めた。しかし、実際の避難時に高齢者が住む家を1軒ずつ訪ねるのは不可能。同地区の住民で組織する八代環境パトロール隊本部長の森杉國作さん(71)は「実際は近くの公民館に集まってもらわないといけないが、高齢者が高齢者を避難させる状況に変わりない。完全に運びきれるのか、困った問題だ」と顔を曇らせた。現場は手探りが続きそうだ。