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オレオレ詐欺続発 地域の絆で被害防止…大分
息子を装って「女性を妊娠させた」とうそをつき、示談金名目で金を振り込ませるオレオレ詐欺が大分県内で続発している。
県警は金の引き出し役など東京都内の少年ら5人を逮捕。組織的な犯行とみて全容解明を進めている。一方、家族や地域のつながりを深めることで被害防止を図ろうと、標語を用いたり、牛乳配達員の協力を得たりして対策を強化している。
県内で被害が出ているのは知っていたが……。9月24日、由布市の男性宅に男から電話があった。「風邪で声が少し変わっている。会社に携帯を忘れたから、何かあったらこの番号にかけて」と話す男の声に疑いを挟まず、息子を思い浮かべた。翌日の深夜、「女性を妊娠させてしまった。弁護士の口座に示談金を振り込んでほしい」とせっぱ詰まった様子で再び電話があった。200万円を要求され、現金自動預け払い機(ATM)で上限の100万円を振り込み、残りは窓口で依頼した。
「振り込め詐欺じゃないですか?」
窓口の職員に注意を促されたが、冷静さを失っていた男性は「息子が訴えられたらどうしてくれる」と突き離してしまった。
息子に確認して、だまされたことが分かった時には全額引き出されていた。
県警生活安全企画課によると、この手口のオレオレ詐欺は3月27日から発生。11月21日現在の被害は、13件で被害総額は2083万円に上る。昨年同期と比べると被害額は、40倍以上。同様の電話がかかってきたという報告は240件を超え、30歳代男性の高校の卒業生名簿が悪用されているとみられる。
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悪徳商法における被害者心理などをまとめた「まさか自分が…そんな人ほど騙される」の著者で立正大の西田公昭教授(社会心理学)は「人間は、聞き慣れない声でも、声の高さや特徴を手がかりに、無意識のうちに知っている人に当てはめようとする習性がある」と話す。
30歳代の男性は、仕事が忙しく、親と電話で話す機会が少ない。久しぶりの電話で「妊娠させてしまった」と告げられれば、親も動揺して信じてしまうケースがあるという。
被害に遭わないための対策について西田教授は、「普段からコミュニケーションを取って家族の電話の声に慣れることや、『大分といえば』『トリニータ』など、家族しか知らない合言葉を決めることが有効」とアドバイスする。
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捜査の一方で、被害防止策として県警は、明治乳業の県内17の販売店の協力を得て、牛乳配達の時に、オレオレ詐欺で気をつけるキーワードを書いた啓発チラシを来年から配布する。配達先は1万2000世帯近くあり、50歳代以上の人が中心だという。配達員はできる限り直接「詐欺被害に遭わないように気をつけて」と一言添えてチラシを配る予定だ。
被害を食い止めるには、家族や地域の絆を深めて詐欺グループに立ち向かう必要がありそうだ。(高良亜矢子)
(2012年11月26日 読売新聞)
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