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2012年11月27日(火)付

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東京都知事選―くらしの安心を語れ

東京都知事選の告示が、29日に迫ってきた。石原慎太郎前知事は13年余り都政のかじ取りを続けた。初めはディーゼル車排ガス規制といった生活に密着する課題にも取り組んだ。しか[記事全文]

候補者名簿―「半分は女性」めざせ

日本に新しい政治をもたらす一つの大きなかぎは、女性の力を生かすことにある。来月の総選挙で、各政党は、女性議員をふやす手立てを思い切って講じるべきだ。[記事全文]

東京都知事選―くらしの安心を語れ

 東京都知事選の告示が、29日に迫ってきた。

 石原慎太郎前知事は13年余り都政のかじ取りを続けた。初めはディーゼル車排ガス規制といった生活に密着する課題にも取り組んだ。しかし、終盤は尖閣諸島の問題のような国レベルの「大きな政治」を語ることに終始した観が強い。

 今回、立候補する人たちに語ってほしいのは、1300万人が住む東京のトップとして、住民のくらしの安心をどう築くかだ。10年後、20年後を見すえた大きな行政の見取り図を示してもらいたい。

 とりわけ、急速な少子高齢化への対応と、首都直下型地震をはじめ災害への備えである。

 都の予測によると、これから10年前後で(1)都民の4人に1人が高齢者(2)お年寄りの4人に1人が一人ぐらし(3)お年寄りの6割が75歳以上の後期高齢者――という時代がくる。

 土地が狭く地価が高い東京では十分な施設を造れない。「すでに東京から周辺県の介護施設へお年寄りの流出がおきている」と、社会保障に詳しい池田省三・龍谷大名誉教授は語る。

 比較的元気なお年寄りが、介護や見守りのサービスを受けながら自宅や地元でくらしてゆける仕組みをどう作るか。

 年金だけには頼れない時代である。くらしと生きがいを支えるために、定年後も働ける場が要る。歩道橋の多い車中心の街から、徒歩で動きやすい街に変える。そんな視点も必要だ、と都政に詳しい佐々木信夫・中央大教授は語る。

 一極集中の影響でしばらく子どもが増えてきた東京も、昨年度から出生数が減少に転じた。

 近年、都心部など通勤が便利な地域は子どもが増え、郊外は減る傾向が強い。子育てしやすい環境を都内全域にどう整えるか。ヒントは足元にもある。

 例えば、港区はNPOと手を結び、家庭に出向いて子どもの世話をする「派遣型一時保育」に取り組む。選挙戦を、こうした少子化に向き合う知恵を語り合う機会にしたい。

 防災では、およそ517万人と見込まれる首都直下型地震の帰宅困難者対策が難題だ。

 都と国は各企業に、外からの避難者の分を含め「従業員数プラス1割」の食料などを3日分蓄えるよう求めている。が、避難者の安全確保の責任などから企業側には戸惑いもある。

 少子高齢化も防災も都庁だけで解決できるテーマではない。民間との協働が欠かせない。粘り強く対話を重ねられるリーダーを選びたい。

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候補者名簿―「半分は女性」めざせ

 日本に新しい政治をもたらす一つの大きなかぎは、女性の力を生かすことにある。

 来月の総選挙で、各政党は、女性議員をふやす手立てを思い切って講じるべきだ。

 たとえば自民党の政権公約は「女性力の発揮によるいい国づくり」をうたう。

 ならば、自ら始めるべきだ。

 指導的地位にある女性を2020年までに30%、という目標をまず実現してはどうか。女性候補を積極的に立て、比例区の名簿でも優遇するのだ。

 政治に多様な民意を反映させるのは民主主義の基本である。今の日本には、さまざまな個性や能力が必要だ。

 ところが、日本の女性議員の割合は際だって低い。衆議院議員の女性比率は、3年前にやっと1割を超したものの、10.8%にとどまる。

 世界経済フォーラムは先月、各分野での男女差を指標化した「ジェンダー・ギャップ報告」を発表した。日本は2年連続で順位を下げ、135カ国のなかで101位だった。健康状態や教育の程度はまずまずなのに、経済分野での参加にくわえ、とりわけ政治への参加が110位と低い。

 世界では、議員やその候補者の一定割合を女性にするよう決めることで、女性議員の割合を増やしている国が多い。クオータ(割り当て)制と呼ばれる。

 たとえば、韓国の女性議員の比率は05年に1割を超し、今では14.7%だ。

 原動力となったのは、政党法や公職選挙法の改正だ。比例代表については、名簿に載せる候補者の50%、そして奇数順位を女性にすると定めた。小選挙区でも30%を女性とする努力義務を政党に課したが、こちらは利害の調整が難しく、数字の伸びを低くしているそうだ。

 ドイツは、各政党が独自に規則を定めた。比例代表の女性の比率を一定以上にしたり、名簿では奇数順位を女性にしたり、というもので、女性議員の割合は32.9%にまで増えた。

 日本でも、各政党がこうした目標を定めることから始めるべきだ。将来にむけて、必要なら法律で定めることも含めて議論を始める必要がある。国会も男女半々になるのが自然だろう。原発や領土の議論でも多様な意見が増すに違いない。

 国際通貨基金のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は来日した際、「日本の活性化には、女性の力がいる」と述べた。

 外から言われるまでもない。女性の力を生かさないでいる余裕は日本にはない。

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