架空出資話で詐取容疑…兵庫県警が８人逮捕

　架空の事業への出資を持ちかけて会社の社債を売り、金をだまし取ったとして、兵庫県警は２６日、東京都の医療・介護関連会社「メディカルターシャ」（当時）の元会長・渡辺弘容疑者（８０）や元社員ら８人を詐欺などの容疑で逮捕した。元社長（６０）ら３人についても同日中に逮捕する方針。県警は、同社が大阪や兵庫など３９都道府県の高齢者ら２８５人から約４億４０００万円を集めていたとみている。他の未公開株などの不正販売事件で摘発されたグループも関与していたとみられ、県警は背後関係も調べる。

　捜査関係者によると、渡辺容疑者らは今年１月、神戸市内の男性（８４）に、「静岡県伊東市でクリニックを開業するので、必ず値上がりする」とうそを言って社債の購入を勧め、計約１０００万円を詐取するなどした疑い。男性は返金を求めたが、９０万円しか返ってこなかったという。

　メ社は２０１１年頃から、同じ手口で社債の購入を持ちかけていたが、診療所を開業しないまま、今年１月、社名を「全国総合医療サテライト」に変更した。県警は架空の事業話で金を集めていたと判断し、会社事務所や関係先を詐欺容疑で捜索。銀行口座や書類などから、約４億４０００万円の入金を確認した。

　元社員のうち数人は同月、未公開株でも投資勧誘が可能なグリーンシート銘柄株を巡る詐欺事件で大阪府警に逮捕された。県警は詐欺グループが裏でつながり、社名を次々に変えて社債などを販売していた可能性が高いとみている。

　神戸市長田区の８０歳代の女性は、メ社の勧誘パンフレットが自宅に届き、昨年４月、男性社員から電話で「年利は１２％で、絶対に得する」と勧められ、３０万円分を購入。不審に思って返金を求めたが、連絡が取れなくなったという。女性は読売新聞の取材に対し、「老後の蓄えを少しでも増やしたかった。悔しい」と話した。