社債詐欺事件:10容疑者逮捕…「診療所」手続きもせず
毎日新聞 2012年11月27日 02時30分
医療機関運営会社「メディカルターシャ」(東京都)による社債詐欺事件で、同社が静岡県伊東市に開設するとしていた診療所について、地元保健所との事前協議など必要な手続きを一切していなかったことが、捜査関係者などへの取材で分かった。兵庫県警生活経済課などは26日、元会長の渡辺弘容疑者(80)や社員ら計10人を詐欺容疑などで逮捕。経営責任者の同社の社長(60)についても逮捕状を取って行方を追っている。
逮捕容疑は昨年12月〜今年1月、静岡県伊東市に診療所を開設するなど虚偽の投資話をして、神戸市の男性(84)から社債購入費として約1000万円を詐取したなどとされる。県警によると、渡辺容疑者が「下の者が関わったことで分からない」などと供述するなど7人が否認、3人は認めているという。
捜査関係者や出資者の関係者によると、同社は伊東市に実在する老人ホーム内に診療所を開設するため安定経営が見込まれるなどと宣伝していた。しかし、ホーム側は断っていたうえ、事前協議や従業員名簿の提出など開設に必要な手続きも手つかずだったという。
社長は毎日新聞の取材に対し、「医師との顧問契約を結んでいる」と説明し、計画通り事業を進めていることを強調していた。配当金の支払いが滞って出資者から苦情を受けると、「複数の医師の配置が必要で計画が延びている」などと釈明していたという。
同社はパンフレットで、高齢者介護施設やグループホームの運営をうたい、「安定した事業展開」をアピールしていた。しかし、捜査関係者は「医師との契約なども含め、出資者を欺くための偽装工作の一環だった」とみており、県警は今後、実態の解明を進める方針だ。同社は1月、社名を「全国総合医療サテライト」に変更、3月に本社を東京から那覇市に移転していた。【宮嶋梓帆、井上卓也】