2012.11.26 MON
日本の音楽に自由を!:「元JASRAC」作曲家・穂口雄右が語る、著作権問題とその元凶
TEXT BY YUJI NAKAI

“Busking.” BY iMorpheus (CC:BY)
著作権ガラパゴスを打破するために
──レコード会社にも著作隣接権を盾にとった罪がありますか?
レコード会社系が営業妨害をしていると言ったのは、曲の権利をかき集めて商売している大手のこと。はっきり言えばソニーのことです。ソニーは200万曲もってるって豪語してますよ。実際に著作権自体をもってる楽曲は10万曲ぐらいだったと思いますが。ソニーは細かく会社が分かれているので、ちょっとわかりにくいんですが、まあでも10~20万曲ぐらいはもってますかね。で、それに加えて著作隣接権のなかでの「原盤権」をもってるぶんがある。録音してレコードつくったときに費用を出したっていうわけで、それも一応著作権のなかの権利に含まれていると。ゆえに相当な権利曲数に上るわけです。
ですが、ソニーはiTunesには曲を出さないんですよ。これでまずMac、アップルユーザーを閉め出してますね。著作権を盾に障壁を設けている。これは自分ところのハードを売るための戦略、つまりMacじゃなくVaioを買ってほしい、iPhoneじゃなく「mora」(ソニーグループによる日本の音楽配信サイト)に対応するWALKMAN系の端末を買ってほしい、ということですよ。著作権を盾に、日本国内ではそんなことをしている。アメリカではソニーの曲も全部iTunesで売ってるのにね。アメリカだったらユーザーにすぐ怒られるけど、日本の国民には怒られないから平気でやってる。で、どんどん日本の音楽市場やリスナーのガラパゴス化を進めている。そうして日本の音楽のみならず文化全体を遅れさせている。
皮肉なことに、そのソニーがキャンディーズの音源も全部もってるんですけどね。iTunesでキャンディーズの曲を買ってもらえないってことは、私に言わせれば著作権法違反ですよ。著作権法の第1条には、広く国民一般が文化的所産を使いやすいようにしなきゃいけないって、はっきり謳ってありますよ。「公正な利用に留意しつつ」ってね。ところがソニーのやり方では公正な利用ができない国民が出てきちゃいますよ。そして、なぜそんなことがまかり通ってしまうかというと、著作権というものは、特許と並んで、日本では独占禁止法の除外項目だからなんですよ。まあ特許についてはわかりますが、著作権関連が独禁法の規制対象から除外されちゃってるってことは国民にとっての不利益ですよ。独禁法で著作権のいろんな問題が裁いてもらえないせいで、こんなにいろんな隙間ができてしまうわけだから。
──著作権法が古く、時流に合っていないことが問題ということ?
うーん、著作権法に限らず法律って全部古いので、変化し続ける世の中に法律が追いついていくことはなかなか大変ですよ。ただ、著作権法のなかに著作隣接権が入っちゃってることは大きな間違いです。結局、独禁法のなかに「特許権と著作権は対象外」と書かれているせいで、放送局やレコード会社の振る舞いが著作隣接権者として独禁法規制の対象外になってしまっている。著作隣接権だけは完全に企業側に利用されている権利ですからね。
──では、今後の音楽の扱われ方はどうなっていくといいのでしょうか。
とにかく誰もがもっと自由に音楽を楽しめるべきなんですよ。ご存じと思いますが、アメリカではYouTubeで動画を削除するっていうことはほとんどないですよ。よっぽど犯罪的なものとかでなければね。ましてや著作権の理由で削除するなんてことは行われない。むしろアメリカの大手レコード会社などは、いまやYouTubeからの収益化をさかんに進めています。YouTubeで公開されてるプロモーションヴィデオなどは必ず広告が埋め込まれているでしょう。CDなんてなかなか買われない時代ですからね。音楽の収益構造はiTunes等での曲のダウンロード販売と、YouTube視聴についてくる収益。この2本立てです。
YouTubeにないもの、iTunesにないものは「この世界にないもの」ですよ。そこにないものはもう相手にされない。日本人以外は「mora」なんて知らないですから。YouTube以外にも、もっと画質のいいサイトがいろいろありますよね。Vimeoとか、アメリカではもうかなり普及している。YouTubeと同じ形式の投稿サイトですが、基本的に無料ですぐ観れます。
あとアメリカでは、配信による楽曲販売会社がいっぱいあって、曲のもち主がそういうところと契約するとiTunesへだろうがAmazonへだろうが全部、非常に安いパーセンテージで配信販売の手続きをとってくれるという仕組みが進んでいる。これらはレコード会社に代わる存在です。音楽専門、配信専門だからCDパッケージはやらない。そのぶんプロでもアマチュアでもやってくれます。確かアメリカでパッケージ商売は、去年あたりで配信に比べて売り上げが3割ぐらいまで下がったんじゃないですかね。日本ではそんなに差がまだ開いていないとか言われますが、それは握手券付きとかね、特殊なCDの売り上げのおかげですからね。
──握手券付きミリオンセラーのほか、ヒット曲はおしなべてテレビのタイアップで生まれています。
私も30何年前にはかなり売れてましたから、当時はテレビ局系の出版社からしょっちゅう「曲の出版権(著作権)をくれれば曲を使うよ」という誘いの話がありました。その後も毎年毎年ずっとものすごい数のCMオファーを受けています。キャンディーズの曲に対して金融業界や、パチンコ業界とかからもオファーがある。ひとこと「OK」と言うだけで、私には2千万円の著作権料が入ります。でも主義に合わないものは全部断ってきました。ですからヒット曲が割と少ないんですがね(笑)。まあ、そういう主張をしてきた私がこんなふうに音楽業界でやってこれたってことはありがたいなと思ってます。この考え方というのはずっと変わらないです。
編集部註:インタヴューは、2012年9月に行われた。このインタヴューのあとに、ソニー・ミュージックエンタテインメントは11月7日付で、iTunesに向けて日本人アーティストの楽曲の提供を開始した。その楽曲がようやくiTunesで聴けるようになった(つまりいままで聴けなかった)アーティストは、ざっと以下。尾崎豊、松田聖子、矢沢永吉、佐野元春、浜田省吾、X、米米CLUB、プリンセス プリンセス、ユニコーン、L’Arc-en-Ciel、いきものがかり、西野カナ、加藤ミリヤ、JUJU、YUI、SCANDAL、YUKI、ASIAN KUNG-FU GENERATION、奥田民生、PUFFY、TUBE、電気グルーヴ、RHYMESTER、JUDY AND MARY、渡辺美里、Chara等々。キャンディーズの楽曲もソニーが発売元だが、いまのところ含まれていない。
キャンディーズに込めた思い
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