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JASRAC退会という実験
──この裁判と、2012年3月にJASRACを退会したことは関係がありますか?
いえ、JASRACから退会するのは前々からの計画でした。アメリカで何かやろうかなと思っていて、いろんな選択肢を考えてきました。まったくフリーでどこの団体にも参加しないでやっていく、アメリカでASCAP(アスキャップ:米国の音楽権利保護団体)に参加する、とかね。これは著作権へのかかわり方の話ですけどね。で、ASCAPに参加するにはJASRACは抜けないといけないんです。JASRACとも前々から相談していて、まあ然るべき時期が来たら抜けてもいいんじゃないかと協会にも了解してもらってました。で、昨年中に信託契約解除の申し出をしてあったので、JASRACの定款に従って3月末に退会したというだけのことです。
いまずっとハワイにいて、この先もアメリカに暮らして活動していこうという計画ではいます。アメリカ中心での活動ということではないですが。いま、著作権、著作権と世の中、非常に騒がしくなっていますよね。著作権が怖くて音楽も聴けないっていうね(笑)。そんななか、著作権に自由を奪われてしまっている日本国民がいるわけです。視聴者としての日本国民が困るだけじゃないですよ。われわれ作家も困るんです。というのは、JASRACと契約していると作家の判断だけで「その曲、ただで使っていいですよ」ってできないわけですよ。自分の曲なのにね。楽曲管理を信託してあるわけですから。
ですから私は、自分の曲で、これは著作権フリーでやりたいなという曲についてはフリーでやりたいと思ったわけです。しかしJASRAC会員である以上、JASRACの決まりを守らなければならない立場です。でまあ、これからはこういう、自分で管理できるというやり方があってもいいんじゃないかなと思いましてね。ほかにもやってらっしゃる方が、もういますけれどもね。
で、また著作権フリーとは逆の発想でね、JASRACの規定とは別に、ものすごく使用料が高い曲があってもいいんじゃないかな、とかね。そんなふうにしたら、高いから使わないという人も出てくるでしょうけど、でも要するに、著作権というものがもっと自由であっていいんじゃないかな、みんな一緒でなくてもいいんじゃないかな、という思いが、JASRAC退会の理由のひとつにあるんですよ。
──で、キャンディーズの「春一番」のような有名な曲で、JASRACに任せない独自の著作権管理を実行に移してみた、と。
そうです。相当に実験的ですけどね。もちろん高くはしていませんよ、安くしてますけどね(笑)。
──JASRACの内部にいて、不都合を感じてきた部分もあったということですか?
いや、別に自分がJASRACの内部にいると曲の使い方について何か困るとか、そういうことはないんですよ。JASRACはきちんと曲の運用をやってきた団体だし、職員さんも非常に優秀でみなさんがきちっと仕事をやっておられるしね。そういう意味では私自身もずいぶん助けてきてもらいました。ただ、そういうこととは別に、実験的な部分への思いがあります。著作権に関して実験的なことができる状態にある曲とか、そういう曲をもっている(私のような)作家というのは珍しいと思うんですよ。実際、ほとんど無理だと思うんですよね、個人がこういう行動に出るのって。で、こういうふうに自分が動いた理由はJASRACがどうのという話ではなく、著作隣接権というものがいまの著作権関連の騒ぎの根っこにあって、そこへの思いからということなんですね。
──そこのところを詳しく教えてください。
1曲の権利にはいろんな要素が絡みます。音楽プロダクションも絡んでますし、音楽出版社も絡んでます。そもそも著作者である作詞家と作曲家が別の人物だったりするし、法律云々とは別に、作家にはいろんな関係者との義理などもあるでしょうし、なかなか難しいわけですよ。で、こういうことができるのは、もう自分だけしかいないだろうと。少なくとも、ある程度大きく育ててもらった曲をもっている作家がこういう実験をすることって、普通は無理だと思うんですね。だけどこういうことは「春一番」のような、よく使われる作品でやらないとまったく意味がありませんから。ただやみくもに著作権フリーにしてもね。埋もれてしまうだけですから。
──キャンディーズの「春一番」は作詞も作曲も穂口さんが手がけた曲ですが、音楽出版社から著作権の主張はない曲なんですか?
「春一番」には音楽出版社の著作権がありません。発売当初(1976年)は渡辺音楽出版と契約していたんですが、いまから約20年前に契約解除して著作権を返してもらいました。続けて出たシングルの「夏が来た!」もそうです。だからこの2曲に関しては、完全に著作権が私の手元だけにあります。こういう、ほかにまったく著作権利者がいない状態をつくり出すことは、ほぼ不可能でしょう。
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