丹羽駐中国大使:離任会見「日中関係に憂慮」
毎日新聞 2012年11月26日 19時54分(最終更新 11月26日 20時08分)
【北京・成沢健一】丹羽宇一郎駐中国大使(73)は26日、離任を前に北京の日本大使館で記者会見し、沖縄県・尖閣諸島の問題をめぐって対立が深刻化した日中関係について「極めて厳しい状況にあり、憂慮している」と懸念を示した。また、中国経済は日本の助けを必要としないとの意見が中国で出ていることを、「非常に傲慢な態度だ」と批判した。
丹羽氏は会見の冒頭、「尖閣で始まり、尖閣で終わる」と述べ、一昨年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件や日本政府による今年9月の尖閣国有化で悪化した日中関係の対応に追われた2年4カ月を振り返った。
今後の両国関係については、「領土・主権にかかわる問題で一切妥協できない」と前置きしつつ、「双方が大局的観点に立って事態をエスカレートさせないために意思疎通を維持・強化し、自制と責任の大切さを自覚すべきだ」と述べ、対話の必要性を訴えた。
中国国内で出ている「日本不要論」に関しては、「経済に対する傲慢な態度で、グローバリゼーションの世界ではあり得ない」と指摘。「日本でも米国の力はもういらないとの声があったが、歴史が示すように経済は助け合っていかざるを得ない。中国は経済的には未熟な部分もあり、労働者の教育など日本から学ぶ点は多々ある」と強調した。
丹羽氏は28日に帰国する予定で、今後については「個人の立場で日中関係の発展に何らかの寄与ができれば」と述べるにとどめた。
戦後初の民間出身の中国大使として丹羽氏は一昨年7月に着任。今年6月に英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「東京都による尖閣購入計画が実行されれば、日中関係に重大な危機をもたらす」と発言し、与野党から強い批判を受けた。今年9月に交代が決まったが、後任に決まった西宮伸一氏が赴任前に急死し、離任が遅れていた。新大使の木寺昌人氏は12月末にも着任する。
◇丹羽大使在任中の日中間の主な出来事
2010年
7月 丹羽氏が戦後初の民間出身中国大使として着任
9月 沖縄県・尖閣諸島沖で中国漁船による衝突事件が発生。戴秉国(たいへいこく)国務委員の呼び出しに、丹羽氏が未明に応じる
2011年
5月 温家宝首相が訪日し、東日本大震災の被災地を訪れる
9月 日本の人気アイドルグループSMAPが北京で公演
12月 野田佳彦首相が中国を訪問
2012年
4月 石原慎太郎東京都知事(当時)がワシントンで尖閣諸島購入方針を表明