◇九州場所<千秋楽>
新横綱の日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は、14日目に23度目の優勝を決めていた横綱白鵬(27)=宮城野=に下手投げで敗れ5連敗、9勝6敗に終わった。白鵬は14勝1敗で有終の美を飾った。鶴竜は稀勢の里を突き落として9勝、稀勢の里は10勝にとどまった。琴欧洲は9勝目を挙げ、琴奨菊は豪栄道に屈し8勝7敗。
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気力、体力はとっくに限界に達していた。それでも2年10カ月ぶりに結びの一番で実現した両横綱対決。「お客さんに喜んでもらえるいい相撲をしたい」と日馬富士。その一心でありたっけの意地をぶつけた。
立ち合いは優勢。身上の鋭い踏み込みで白鵬をのけぞらせる。しかし左四つでがっぷり組み合って徐々に体力を消耗。24秒4の攻防の末、最後は下手投げで土俵に転がされた。新横綱の5連敗は史上ワースト。1桁勝利は1987年九州場所の大乃国(8勝7敗、現芝田山親方)以来25年ぶりの不名誉な記録となった。
「とにかく立ち合いだけは、ね。勝ち負けにこだわらず次の場所につなげたいという気持ちでぶつかった。力を出し切ったというか、やれることをやりました」
場所前から古傷の両足首の痛みと行事が重なって稽古不足が懸念されていた。しかも新横綱としての重圧は大関とは比較にならない。一戦ごとのダメージが蓄積し、11日目以降の急ブレーキにつながった。
「(横綱土俵入りで)1日2回土俵に上がる。どうやってその日の一番に集中しリズムを自分のペースに持っていくか。それはやってみないと分からない。負けた相撲も勝った相撲もすべてがプラスになった」
北の湖理事長(元横綱)は「最低2桁は勝ってほしかった。5連敗は本人も恥ずかしい思いをしていることでしょう。1桁は横綱の成績ではない。これをバネにしてもらいたい」と叱咤(しった)激励した。
苦悩の15日間を貴重な経験として今後、どう逆襲の力に変えていくか。「心と体を鍛える。私はこれからです。来年は自分の年にしたい」。26日にはモンゴルに帰国。父の墓前に横綱昇進を報告し、心身ともにリフレッシュを図る。 (竹尾和久)
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