2012年11月21日(水)

“ハデ婚”でデフレ脱却めざせ

阿部
「『1515兆円』。
これは、日本人が保有する預金や株などの金融資産の総額なんですね。」



鈴木
「この金融資産をいかに消費にまわして日本経済を活性化させるか。
江藤アナウンサーとお伝えしていきます。」

江藤記者
「1515兆円。
この多くを持っているのが、シニア層です。
使えるお金は使ってもらえれば、日本はデフレ不況から脱却できると指摘する専門家も多いんですが、財布のひもは固い。
そこで鍵になるのは、『祝祭』、お祝い事です。
シニアといえど、息子や娘の結婚式、孫の七五三となると、お金を出したい。
この不況の中でも、シニアの財布のひもを緩める効果があることがわかってきたんです。」

鈴木
「でも、結婚式を挙げる人って、少子化の影響で少なくなっていると聞きますよね?」

江藤記者
「確かに、結婚式の件数は年々減っています。
ところが、結婚式にかける費用はこのように年々増加して、最新のデータでは344万円という調査結果があります。
件数は減っているんですが、1組当たりの単価は増えています。
全国でも、派手な結婚式をすることで知られる名古屋で、その実態を取材しました。」

“ハデ婚”でデフレ脱却 驚きの経済効果

結婚式場の上空にあらわれたヘリコプター。
乗っていたのは新郎新婦。
参列者もびっくりの派手な演出です。

「いーな、いーね。」

「いきます、それ。」

名古屋伝統の婚礼イベント「菓子まき」です。
お年寄りから若者まで、みんなが1つになって盛り上がります。


全国の中でも、派手だと言われる名古屋の結婚披露宴。
今月(11月)、この名古屋ハデ婚の経済波及効果が発表となりました。

試算したシンクタンクは、600万円以上使う結婚を“ハデ婚”と定義。
去年(2011年)、愛知県では1300組のハデ婚があったことになります。
指輪や家具など、関連の消費を加えると、経済波及効果は年間368億円。

この額は、中日ドラゴンズが日本一になったときの経済効果のおよそ2倍にあたるといいます。

共立総合研究所 取締役副社長 江口忍さん
「地元への経済波及というのは相当大きいことが今回改めて分かった。
何年かトータルで見ると相当な額になると言える。」



ハデ婚マネーは、地域経済を潤します。
まず1つが雇用の拡大です。
例えば、200人が出席する披露宴の場合、サービススタッフや調理スタッフ。
カメラマンや演奏者など、合計100人の仕事が生まれます。

もう1つが地場産業の活性化。
こちら名古屋市内にある菓子問屋街です。
若者たちが「菓子まき」用の菓子を求めて訪れます。
中には、30万円分買う人もいるそうです。
ハデ婚は、こうした古くからの商店を支えているのです。

“ハデ婚”でデフレ脱却 鍵をにぎるシニア層

ハデ婚マネー、368億円。
その出所の多くは、シニア層の貯蓄です。
豊田さん夫婦です。
いつもは質素倹約を心がけています。
40年近く前のジャケットやネクタイを今も大切に使っています。

豊田繁雄さん
「これ新婚旅行の、婚約時代にこれ着てたじゃない。」

豊田博子さん
「ああ、そうだったね。」

そんな豊田さんも息子の結婚となると、財布のひもが緩みます。
息子たちのために、貯蓄を取り崩し、披露宴や新居の費用として数百万円を支払いました。
ハデ婚は、シニア層の貯蓄を、消費に向かわせる大きな効果があるのです。

豊田繁雄さん
「使う気になりますね。」

豊田博子さん
「2人だったら使わない。
私たちにはないエネルギーを子どもたちから与えてもらって、私たちはそれを共有してお金は使うが、いっしょに喜んでやっている。」

消費不況の中で苦戦する百貨店は今、このシニア層に注目しています。
こちらの百貨店では、ブライダルコーナーを4倍に拡大。
スタッフも10人から15人に増やしました。
結納品の販売から、式場手配、ドレスのレンタルなど、結婚関連のサービスを一手に引き受けています。
実際にお金を支払う親たちの意向を聞き、売り上げアップにつなげています。

大丸松坂屋百貨店 ブライダル担当 吉川忠男さん
「家具であったり、新生活のもろもろの道具であったりが(結婚の)後ろに控えているわけです。
私どもとしては、そういったマーケットもしっかりと囲い込みたい。」


デフレ脱却のカギは、シニア層の消費の拡大だと主張する、地域エコノミストの藻谷浩介さんです。
名古屋のハデ婚には、学ぶべき点がたくさんあると言います。

日本総合研究所 調査部主席研究員 藻谷浩介さん
「今、日本人はお金を貯めている人(シニア層)がなかなか使わないんですね。
使わない最大の理由は、使うだけの言い訳がないんですね。
言い訳がきちんと使える貴重な機会である子どもの結婚、出産、お祝い事にお金を使うということは、実は人類の知恵みたいなものですね。」

藻谷さんによりますと、沖縄では、長寿のお祝いが派手だと言います。

阿部
「賑やかですね。」

こちらは97歳の長寿を祝う「カジマヤー」。
地域の人たちも参加して盛大に行われます。

こちらは茨城の七五三の様子です。

「乾杯。」

まるで結婚披露宴のように家族や親類を招いて祝います。
全国各地には、シニアの消費意欲をくすぐるさまざまな祝い事があるのです。

日本総合研究所 調査部主席研究員 藻谷浩介さん
「特定の人(シニア層)がため込んだお金を、地域全体の売り上げにまわしていく仕組みだ。
貯金のまま眠っていたお金が、一気に使われて若い人の給料にまわる。
これこそ経済活性化ですね。」

阿部
「地域の雇用や経済にもよい影響があるみたいですね。」

江藤記者
「そうなんです。
子どものためにお金を出すということは、地域のためにお金を出すということでもあるんです。
そういう意識の変化が必要だと、専門家も話しています。
日本古来からある『祝祭』、お祝い事には、先人の知恵が詰まっていて、こういったところにデフレ脱却のヒントが眠っているのかもしれません。」

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