福島第一原発から23キロにある総合病院で働く血液内科医。住民と共に内部被曝について考える。
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子供の体力づくりが心配 [12/09/22]
坪倉正治
このところ急激に南相馬市立総合病院のWBC検査の稼働率が落ちてきています。検査予約があまり入らなくなってきたためです。
先月以降、南相馬市では、WBC検査を継続的に行うことが出来るようになりました。以前検査を受けた方も、もう一度時期をおいて再検査できるようになっています。もちろん検査をしにいらっしゃる方はいらっしゃるのですが、それでも一部でしかないのが実情です。予約自体が減ってきています。
器械が2台になってから、午前午後のフルで稼働すれば1日あたり200~250人ぐらいの検査が可能になっていますが、今週ではその30%程度も埋まらないというのが現状です。
検査予約は、南相馬市から書類が各家庭に送付され、その後電話をすることで予約が完了する形になっています。呼びかけを再び行い、南相馬市に入ってきている企業さんなどに広報をしていただいているのですが、なかなか増えません。
南相馬市で今年の4月から8月終わりまでに内部被曝検査をした小学生は、2012年5月時の南相馬市の小学生の51%という結果でした。恐らく夏休みが挟まっていなければ、さらに受診率は低かったと予想されます。
それに比べて相馬市では、始まったのが今年の6月だったこともあると思いますが、予約が一杯の状況が続いています。まだらです。
受診率が低い理由がいくつかあると思いますが、継続的な注意喚起が難しいことは感じざるを得ません。
例えば、現在の南相馬、相馬で99.9%以上の小学生は検出限界以下を維持しています。1960年代の数年以上も続いた大気中核実験中の日本人の平均値を下回る結果になっています。チェルノブイリ事故1年後のフランスやドイツの一地方での日常的な内部被曝量より、現在の浜通りの内部被曝量の方が少ないことはデータが証明しています。
それでも継続的には検査すべきだと思っています。継続的に検査して行くことが、ある程度時間が経過した時に、今の子供たちを守ってくれる根拠になると思うからです。
継続的な検査と、しっかりした放射線教育こそが今大人たちが子供にしてあげるべきことなのではないかと思っています。
放射線教育も県や地元の小中学校など様々なレベルで、試行錯誤が進んでいます。原町第一小学校の校長先生とそのことでお話しする機会がありました。みんな本当に頑張っています。
話が飛びますが、校長先生と話をする中で、気になる話題があったのでご紹介しておきます。子供の体力が低下傾向にあるということです。
2階にある校長室から、50mの徒競走を見ていると、30mあたりで減速してしまう子供さんが多いそうです。
もともと福島県全体として、子供の体力低下は問題になっていたそうなのですが、今回のことがあってから運動不足がたたり、運動機能がさらに弱くなってきていることに危機感を感じていらっしゃいました。
小学生314名中、200名以上が車での送り迎えであることも一因だろうとおっしゃっていました。住む場所が変わったこともあるのでしょうが、学校の通学路途中の除染が進んでいないことも原因の一つのようです。
先日、慢性疾患の悪化についてご紹介させていただきました。特にご高齢の方で顕著に高血圧や、糖尿病などが悪化していて、非常に重要度の高い問題であることをお伝えしました。
骨粗鬆症の問題も取り上げさせていただきました。骨粗鬆症は閉経後の女性では大きな問題で、運動不足は骨量を減少させ、大腿骨頸部骨折は日常生活の自由度を大きく奪い、実に7人に1人がその合併症で命を落としてしまう気をつけなければならない疾患です。
子供も同様な問題が起き始めていることを再認識しました。「放射線は正しく怖がる」という言葉は、個人的にはどうもしっくり来ないのですが、ただ怖がるだけではなく、データを見て判断を繰り返して行く必要があるように思いました。
その日、学校に置いてある空間線量計は0.17μSv/hを指していました。
ある先生が作った、放射線を可視化する装置です。うまく撮影するのは難しいですね。薄い飛行機雲のような線が放射線の通った跡です。
編集部で確認してから公開いたしますので、ご投稿後すぐには掲載されません。ご了承ください。
坪倉正治(つぼくら・まさはる)
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。週の半分は福島で医療支援に従事。原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。
坪倉正治さんインタビュー
健康・医療フォーラム2012
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