東京電力福島第一原発事故をめぐる原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)の和解交渉で、東電は福島県双葉町の不動産について、放射線量が比較的低くても「全損」と認め、同社の基準で全額を賠償する和解案に応じることを決めた。和解を申し立てていた住民側の弁護団が5日、明らかにした。
放射線量が「帰還困難区域」のレベルほど高くなくても「全損」扱いするのは異例で、今後の和解交渉にも影響しそうだ。
住民は原発から3〜4キロ圏内に自宅などがある。放射線量は周囲より低く、東電の基準では不動産評価額の2分の1程度しか賠償金を受け取れない可能性があった。しかし、和解案は約1キロ離れた学校や病院が「帰還困難区域」に指定される見込みであることを重視。「仕事や買い物で外出しなければならず、自宅は社会的な効用を失った」とし、全損と扱うよう東電に求めていた。