現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年11月26日(月)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

総選挙・政治とカネ―どの政党が正せるか

政党交付金の制度ができたとき、腐敗の元凶の企業・団体献金をなくし、清潔な政治を実現するステップだと説明された。だが20年近くが過ぎた今も、あて先が個人から政党支部に看板[記事全文]

米アジア外交―繁栄にいざなう力を

再選を果たしたオバマ米大統領は、「アジア重視」をさらに進める構えだ。なかでも東南アジア重視の姿勢を強めている。先日、プノンペンで開かれた東アジアサミット出席にあわせてま[記事全文]

総選挙・政治とカネ―どの政党が正せるか

 政党交付金の制度ができたとき、腐敗の元凶の企業・団体献金をなくし、清潔な政治を実現するステップだと説明された。

 だが20年近くが過ぎた今も、あて先が個人から政党支部に看板がえしただけで、献金が続いていることに変わりはない。

 骨抜き、とはこのことだ。

 あろうことか、旧来の政治との決別をとなえ、企業・団体献金の禁止を党規約に盛った日本維新の会も、この方針をあっさり撤回してしまった。

 橋下徹代表代行は「ちょっと修正をかけた」という。何のことはない。合流した太陽の党にならった、つまり、企業・団体にすがる古い勢力と同じ道をゆくという話ではないか。

 政治とカネ。今回の総選挙でも忘れてはならない課題だ。

 民主党政権はこの醜聞でつまずき、輝きを失った。

 鳩山由紀夫氏は、母親から毎月1500万円もの金を受けとりながら「秘書に任せていて私は知らない」と述べ、その元秘書は政治資金収支報告書にうそを書いたとして有罪になった。「裁判が終われば使い道を明らかにする」という氏の約束もほごにされ、不信を残した。

 小沢一郎氏をめぐる政治資金事件も同様である。

 本人の無罪は確定したが、元秘書3人は一審で有罪判決をうけた。「収支報告書など見たことがないし、見る必要もない」と法廷で言いきった小沢氏に、国民はあぜんとした。

 民主党には、労組からの違法献金で辞職した議員もいた。にもかかわらず、政治の浄化をうたった3年前の政権公約の実現にむけて、党が一生懸命汗をかいた跡は認められない。

 自民党も相変わらずだ。今回の公約集にも、「政治資金のより一層の透明性を確保する」との抽象的な一文が、言い訳のように書かれているだけだ。

 企業・団体献金の禁止をはじめとして、とるべき手立てははっきりしている。

 政治家が資金管理団体や政党支部など多くの「財布」をもつ現状をただし、金の流れを一本化して見えやすくする。

 会計責任者の「選任」と「監督」の両方に落ち度がなければ政治家本人の責任は問えない。そう定めている現行法を改め、言いのがれを封じる――。

 政党が乱立し、どこも独自の色をみせようと懸命だ。

 今こそ政治とカネについて明確な主張と具体的な改革案を示し、自分たちの姿勢をアピールしてはどうか。政党のやる気、そして国民感覚との距離を測るうえで、格好のテーマである。

検索フォーム

米アジア外交―繁栄にいざなう力を

 再選を果たしたオバマ米大統領は、「アジア重視」をさらに進める構えだ。なかでも東南アジア重視の姿勢を強めている。

 先日、プノンペンで開かれた東アジアサミット出席にあわせてまわりの国も訪ねた。

 台頭する中国の存在が念頭にあるのは間違いない。

 自由や民主主義といった価値観を共有する国々のネットワークを築き、国際社会の決まりを守りながら成長を続けるように中国をいざなうべきだ。

 オバマ氏は訪問で、アジア重視路線の持つ可能性と、米国の存在感を示した。とりわけそれが表れたのが、米大統領として初めて訪れたミャンマーだ。

 この国は長らく軍政のもとで自由が抑圧されていたが、11年の民政移管で大統領に就いたテインセイン氏が改革を進め、情勢が一変した。

 自宅軟禁されていた民主化運動指導者、アウンサンスーチー氏は自由になった。米政府は制裁の大幅解除を決め、安価な労働力を見込んだ外国企業の進出意欲も高まっている。

 真の改革かどうか、懐疑的な声もある。北朝鮮との軍事的なつながりも見つかった。それでも訪問に踏み切ったのは、取り組みを後押しし、確かなものにする狙いがある。

 オバマ氏は4年前の就任演説で、抑圧国家に「握りこぶしを開くなら、我々は手を差し伸べよう」と呼びかけた。

 ミャンマーの動きはその考えにあい、ほかの独裁国の手本にしたい期待も強い。

 ミャンマー側も政治犯を釈放するなど、米国への配慮を見せた。国民も熱烈に迎えた。国際社会への扉が開かれ、将来への期待感が生まれている。

 それを可能にする力が、米国の強みなのだ。

 一方、米国の影響力を警戒する中国は、東南アジア諸国の囲い込みに動いている。南シナ海領有権問題を国際化しないように働きかけもした。

 だが、アジアには両国が共存できる大きさと深さがある。二者択一を迫るのは無益だ。米国とアジアの関係を鏡に、中国は自らのあり方を見直すべきだ。

 米国は、一国で世界を引っ張るのではなく、各国との協調で影響力を保とうとしている。豪州やインドとの関係も強化している。

 日本もその輪の中で、存在感を発揮しうる。

 オバマ氏がアジアを重視する大きな狙いの一つは「貿易と投資の拡大」だ。共に豊かになるためには、この地域の安定が何よりも大事だ。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報