【「仮の町」協議】受け入れに法の壁 土地、行政サービス課題
東京電力福島第一原発事故による避難市町村の町外コミュニティー(仮の町)の実現に向けた国、県、関係市町村の協議は今後本格化する見通しだが、受け入れる市町村にとって課題は山積している。住宅用地の確保をはじめ、都市計画でも見直しが考えられるためだ。行政サービスを維持するための予算確保も課題に挙がる。規制が足かせになっているケースがあり、法律の改正を望む声も強まっている。
■1年以上も
9月22日に郡山市で初めて開かれた仮の町に関する国、県、関係市町村の協議会。受け入れ側として出席した福島、会津若松、郡山、いわき、二本松各市はいずれも協力する方針を示した。
だが、受け入れ側には頭の痛い問題が多い。1カ所に住民を集約する「集中型」の仮の町受け入れを表明している二本松市は、いかに必要な土地を確保するか検討中だ。
避難者の利便性に配慮し、中心部からあまり離れていない地域での整備を想定する。しかし、平たんな土地は少なく、住宅建設を規制する農地を活用せざるを得ない状況だ。さらに土地利用の変更手続きには国や県から許可が出るまで1年以上かかる場合があり、それだけ仮の町整備が遅れる。
復興特別区域法(復興特区法)では、市町村が土地利用を変更する際、「復興整備計画」を作成し、許可権者である国や県が参加する協議会の場で同意を得れば許可されたことになる。国は手続きのスピードアップにつながるとしている。しかし、市の担当者は「実際には事前協議に時間がかかり、許可までの時間は大きく変わらない。さらなる規制緩和が必要だ」と訴える。
■計画変更
福島市は市住宅マスタープランへの影響を懸念する。
マスタープランは、市内の住宅をめぐる現状と課題、目指す方向性をまとめた都市づくりの"設計図"。仮に避難町村が集中型を希望すれば、相当数の災害公営住宅の建設が必要になる。その後入居者が古里に戻れば、大量の空き家が発生する。被災者しか入居できないため市が買い取り市民が利用できるようにするケースも考えられ、公営住宅の整備計画やプランの見直しを迫られる。
市の担当者は、「集中型の仮の町整備は、昭和40年代の大規模ニュータウン開発と似ている。若者が減少し、住民が高齢化して地域が衰退する問題を繰り返しかねない」と指摘する。
■持ち出し
双葉郡などからの避難者は原発避難者特例法に基づき、避難先の市町村から学校教育や健診、ごみ処理などの行政サービスを受け、費用は国が財政支援している。受け入れ側にとっては、移住後も財政支援が継続、拡充されるのかが不安材料の1つだ。
福島市は避難者と市民を区別せず、75歳以上のお年寄りに市内のバス路線が無料で利用できる「ももりんシルバーパスポート」を配った。しかし、市独自のサービスのため避難者分の費用は特例法が適用されない。
市の担当者は「仮の町となれば、さらに支出が増えることが考えられる。国にしっかり支援してもらいたい」と注文する。
一方、復興庁は「今後、個別の協議を進める中で、必要ならば対応を検討する」との立場だ。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)