遠い昔の話、世界が戦乱に包まれているときの話
平和を願い戦い、強いもの弱いもの、それぞれが国のために剣を取って死んでいくそんな世界
そんな世界で一人の少女、名はミツキ……遠い異国の地で剣の修行に邁進していた。
しかし、そんな少女も戦乱の世を終わらせたい……そんな思いから、戦場に身を置きたいと思いだす
「父さま……お願いです、行かせてください!私、未熟かもしれません、でもなんとかしたいんです!」
「…………」
「覚悟はできています!」
「………分かった、だが忘れるではないぞ、刀は弱きものを助くもの、その場のことに流されて
弱きを絶つものではない」
「はい、父様……」
「いいか、刀は選べないが人は何をするか選べる、決して自分の力に酔ってはならんぞ」
「はい、行ってきます!」
こうして私は自分のやりたいことをするために、戦場へと赴いている
もちろんこの時代、女というだけでバカにされたりもしていた、そんな私に手を差し伸べてくれるところがいた
「今、話が軍は人材が、戦力がいないんだ、君さえよければ力を貸してほしいんだ、お金もできる限り出したい」
「まあ出せる金額は限られるけどな、がっはっは」
小さい国ではあったが、一人一人の技量は優れている国だった、そんな国が私に差し伸べてくれる、断る理由もなかった
聞けば聞くだけ、その人は人望も良かったし、この人に仕えられるなら良いと思っていた
私は必要最低限でよかった、こんな女の私を使ってくれるなら
「すまない、我々では最低限のことしかできないが、それでも力を貸してほしい」
「主がこんなことをいうなんてないぞ、私からも頼む」
「この人は僕の側近でね、昔は一騎当千の働きだった。それは今でも変わらない、
そして彼は見る目も確かだ、頼めるかな……」
「はいっ!」
どうやら、この主の側近が言うには私は筋がいいらしい……
だからその主の提案を喜んで雇っているとのこと、そしてその戦場でのこと
「きゃあっ!」
「このっ!大丈夫か!」
「ええ、なんとか」
だけど今まで実戦経験が乏しく力のなかった私は助けられているばかりだった
私の剣技はスピードによるものだったが、それもにわか仕込みのようなもので世界は広かった
毎日が本当に情けない限りで、それでも使ってくれる主に対し報いたいのに報えない日々が続いていた
他の人がフォローしてくれ、それに甘えているだけという現状だ
これまで磨いてきた剣技・スピードも圧倒的数には敵わないばかりか、
主やその私よりはるかに歳なはずの側近なのに助けられてしまうばかり
そのたびに私は自分の力不足を痛感してしまう
「何、経験にしていけばいいさ、若いから当たり前のことだ」
と側近の老兵士は言ってくれるのだけど悔しかった、もっと力があれば………
「(はっ!……いけないいけない……力もだけどそれに溺れては……」
精進に励む、そして力に溺れてはいけないそれは分かってる……
だけど金を貰って置いてこれ、貰わなくても腹が立っているのだろうけど
そんな日々が過ぎて行く中修行に励んでいる時のことだった
「はあはあ……」
いつもの日課のさなかのこと
「そこの女の人、少しよろしいかな……」
「あっどうしました?」
私はよく修行中によく今話しかけてくれる老人の家の前を通って、
良くしてもらってる、といってもそんな大したことではないのだけど
「いつも、こんな老いぼれの相手をしてもらって、すみませんな」
「あっいえ、私の方こそ、声をかけてくれて……こちらこそ」
「いやはや、ありがたい……確かそなた剣士でありましたな」
「ええ、半人前ですが、ここの人達が良くしてくれています」
「実は折りいって相談がありましてな」
「はあ……」
そういい案内されると、あるものが私の目に留まる
「説明しなくてもよろしいかな、先ほどから目が行っているようですしな」
「この刀は……よく家には上がられますけど、初めて拝見いたします……」
「昔の伝手で、貰いうけましてな………伝えによると太古の剣
無論、ちゃんとご老体ではありますが、さびることのないように整備をしています」
「はあ……それで用と言うのは?」
「もう……このご老体も歳で、いつ向こうにお呼びがかかるかわかりません、
ここのところずっとこれをもらいうけているものを探しておりました……」
「…………」
「しかし、なかなか現れませんでな、最近の剣士といえば。ただ力を誇示するものが目立つようになり……
でもじゃ……あなただったらいいだろうと思いまして」
「わ、私がですか???」
「良い眼をしておられる、そなたは違う、そういう方に貰いうけるなら、この刀も喜びましょう」
「しかし、私なんかの若輩者で………」
「どうかお願いします、もう私も先は長くないのです」
熱意を感じた私は
「………分かりました、剣士として聞きます、この剣の名前はご存知ですか?」
「確か、ヴォルプトスと名を冠していたようです」
「ヴォルプトス………(どんな意味が込められてるんだろう……でもこの人だから大丈夫よね……)」
結局私は貰いうけることにした、言い訳をさせてもらうと、その老人によくしてもらってる。
そして、こうして頼みごとをされてしまっては断れない性格だから
「といっても……こんな刀、どこで……見つけたものか……」
禍々しいものを感じる、あのご老人を疑っているわけではない、ただ何かを感じそして引っかかっていた。
私は東洋の国の出身だから、刀に触れる機会はあったが、こんなのは初めて見る、刀身から何まで赤にまるで血のように赤い刀は
「まさかこれは………」
父様から聞いたことがある、世には妖刀というものがあると、太古に妖気を収めて、
手にしたものに災厄をもたらすと言われた、呪われた刀……ちょうど形状・色が私の持っているものに似ているが……
「でも、あの人、昔から住んでるらしいけど、それに今もそんな何か変わってるってことなかったし……多分大丈夫よね」
それに使わなければ支配されないはず、あくまでも持っているだけなのだから
そしてそれから数日後のこと、私は仕えている方の側近から呼び出された
「あのー、なんでしょうか?」
「お主、風の便りで聞いたのだが、なんだ、「ぼるぷとす」という、刀を貰いうけたそうだな」
「は、はい……」
どういうわけか私はあの剣のことで尋ねられる、まさか本当に妖刀だったりしたのだろうか
「す、すみません………言うほどでもないと思いましたので、何かあったのでしょうか?」
「いやいや、お主のその刀のことな、別に悪いとかそういうことでもない、
責めていない、話はそなたの持っているものを、欲しいというものがいてな」
「えっ???こんなのを欲しがる人がいるんですか?剣先も凄く赤くて、
とてもその一般人が、欲しがるようなものとは思えないものですが」
「ふうむ、世の中とは不思議なものでなあ変わったものを集める奴がいると言うのだ、
しかもそなたも分かるだろう、わが軍の現状を」
「はい、私が最低限の資金だけでいいっていったらそれはもう……」
「そうよ、それにそなたは資質も……いやいやそれは本筋ではないな、
その人からそれを買い取ると言われていてな……どうかな?」
「わ、私がですか???」
「うむ、どうもその刀というのはな、わしらどもでは扱えないからな東洋の出身のお主のほうがよかろう、どうかな?」
「はい私でよければ、何せ、いつも足引っ張ってばかりで」
「それはないぞ、そなたは着実にやってくれているかな、ではそういうことでいいな」
「はいわかりました」
そういうことで私はその指定された家へと向かっている、そこへ行くには森を経だてられた先、私はその森をその剣だけを持って携えていた
しばらく歩いているとき
「ふふ。なるほど確かにいいものを持っているな」
「だ、だれ!?」
声が聞こえる、後ろを振り返っても誰もおらず不安に思っているところに、再度、声が響く
「ふふ、そなたが新しい、主か」
「だ、だれ????」
「ふふ、お前の国ではこんな言葉で言われていたかな、妖刀というのかなその意思だ」
「………」
聞いたことはあった、はるか昔に意思が宿る闇の意志、中にはこれに耐え物にする、魔剣士というものがいるけど
そんなの一部で妖刀に魅入られて、最後は人ではなくなってしまうと言われている、
それが妖刀だと、そしてその妖刀を持ってしまったということを私はようやく悟る。
「私をどうするつもり……まさか」
「ふふ、勘違いしているようだが他のものはどうだったか知らんが、
私は意思を「無理やり服従させるやり方は嫌いでなあくまで本人の意思を尊重しているからな」」
「本当でしょうね………」
「ああ……現に今までの家ではこれまで何十年も置かれているが、特に何もなかったのはあのご老人を見れば分かろう」
「………確かに……」
「だから、この先の家の物に渡したところで、何もないから安心するがよい」
「分かったわ……でも、ようやくってどういうこと?」
「適格者と言ったらいいのだろうな、
お主自分では気づいていないようだが結構な資質を持っている、
今まで見て感じたところ、お主、殺さない……それが戦場でもためらうほどに……」
「………」
「ふふ、まあどうでもいい話だ、すまなかったな」
「別に………その………」
「どうした?」
「いえ、なんでもないわ……」
凄く意外といえば意外だった。もっと力づくで意思に関係なくやるものだと思っていたのに、
ちょっとそう考えると……可哀想な気がしないでもなかった。
とりあえず、その貰おうとしている人はどうも、使わないみたいなんだし……大丈夫………よね………
そしてもう少しというところだった、そこで……
「おー、こんなところに女か」
「誰!?」
「こんなところに女がいるとは、ちょうど、家探ししようと思ったところに、良いものに巡り合えたものだ」
迂闊だったまさか、盗賊がいるなんて、誰もいないだろうと思って私はあの刀しか持ってない。
でも、妖刀使ったところでどうなるか分かったものではない……
「(くっ……しかもここは戦場じゃない、なんとか殺さないで切りぬけないと……)」
そう戦場じゃないんだ、しかも相手は盗賊とはいえ殺しはしていない、邪な考えがあろうと、それには変わりないのだ
どうにかして切り抜けなければ
「ひっひっひ、出来るわけねえわな、一般人を殺しでもしたら大変だからな、もっとも、その分俺達は好き勝手出来るわけだがな」
「くっ……卑怯者!!」
「卑怯……大変、光栄な褒め言葉だぜ♪さてとじっくりやるとするか」
盗賊は私一人ということを良いことに力づくで、物にしようとするが
持ち前のスピードでかわす
「ちっ!ちょこまかと!!!」
チャッ!
盗賊たちが短剣を持ち、襲い掛かってくる……でも分かってる、殺しはしないきっと楽しむためのものだ
被害がないように努めようとするも、その武器が私の体を掠めて行く
次第に追いつめられる、盗賊のにやつきが止まらない
次第に逃げるだけではなくなった、追いつめられる
スピード特化のために軽い衣服が徐々に擦れて行く。
このままではどうしようもない、しかし武器は持っていなかった、いやあるにはあった……
「でもこれだけは……」
これからのこと……そして何より父様の約束を破ることになってしまうどうすれば
「このままじゃあやられる……でも……どうすれば……」
「ひひ、いいなあその顔そそられちまうよ……さあて、どこからやっちまうかな……」
何もしないのをいいことにやりたい放題といった感じの盗賊
その顔には余裕とこれから行うことに対することが醜く表れる
「こうなったら……」
私は携える刀に力を込める
「ひひひ、それでやろうってか、やめとけよ」
おそらく私の心情、いや私みたいな出身の人は、戦場でない限り人を殺さないというのは分かっている
いいや、おそらく私の顔は殺さない顔って分かっていた、なにより、女だからおそらくそんな理由で
「(ビックリさせて振るだけで多分逃げる……それくらいなら……この刀といえど
危害はないはず……このままじゃあ私が危ない)
そうして振った時だった
「(えっ!!!!!)」
「ぐはあ!!!!!!」
「そ、そんな………」
殺すつもり……ううん、よけるのが分かっててあえてしなかったのに……
なんで………ううん……そんなことより………
「ひいいいいい!!!!頼む殺さないでくれえ!!!!ここであったことは誰も言わねえ絶対だ……頼む!!!!」
私の前で横たわって、倒れ真っ赤な鮮血を出し倒れた盗賊、そして私の持っている真っ赤な鮮血に染まった私の刀、
そしてそまった私の顔……その事実が私を押し付ける
「わ……私………そんなつもり……」
目の前で起こった事実に硬直している、間にその盗賊は蜘蛛の子を散らすように逃げだして行った
残ったのは、私と血に濡れた刀、そして鮮血を出して倒れた盗賊
「あああ………」
顔を手で覆う、現実を受け入れられない……
でも、私が殺してしまったんだ………盗賊とはいえ、戦場ではないここで殺してしまうなんて………
私は剣士、失格だ………
絶望感が私を襲う、どうしようもなかったとはいえ、手にかけたのは事実だった
「私………父様に顔向けできない………」
私の国ではきつく、その教えを守っていた、それが正しいこと、それが剣士の務め
それが正しいと思って、私は民のため平和のため赴き、ここまで頑張っていた
なのに……なのに、襲われて仕方ないにしろ私は手にかけたのだ
未熟未満じゃないそれは……人の剣になるのが仇なす存在なんて……
「私、いきている価値なんて……」
そういった途端
ドクン!!!!
「!?な、何これ!?」
急に私の中で何かが脈打つ、しかしそれを考える暇もなく
「あうううう………ああああああ!!!!!」
何……一体………この感じ………何かが入り込んでくる、何かがうずいてくる
「あはあああああ……」
しばらくしてうずきはもうない、でもなんだろうこの感じ………変だ………
「あぁぁぁん……気持ちいい……何これぇえ………」
私はつい疼いている
胸のほうを触る
「ひゃあああああ!!!!いいよぅ!!!!」
こみ上げる快感に声を上げそり上げる……
何かが、私の中に絶え間なく入りこんでくる、
何かはわからないでも、私はそれを夢中で……
「気持ちいい……もっと……もっとぅ………」
息もできないほどのものが私の中に入り込んでくる、でも私はそれを夢中で取りこんでいた
もっともっとそれを味わいたいと、腰を振っている行為まで見られていた
「(ああ……こんなことしたくないのに、なんだろう止まらないよぅ……)」
それが何かはわからない分かるにしてもそれはまだ早すぎた
何かが目覚めようとしていたのだ
しかし、次第に私の中にあるものがなくなってくると
「はぁはぁ……何があったの……」
私の状況を確認した、胸の中がうずいてきてそして火照ってきた
でも今は何もない胸を触っても……あとすらない、何もなかった
ちょっと動くくらいで特には……
「ああ………でも私の前に、人が死んだ事実はホントなのね……」
薄く所々破れる服にしてくれた盗賊を見下ろす姿は背徳がにじみ出ていた、
今も私の前で横たわる無残な盗賊だった抜け殻
「こんな、刀で、依頼主に渡せるわけがないわ………」
人をあやめてしまったことは事実だった、元々赤かった刀がさらに朱を帯びるかのように深紅の刀に染まっていた
人をあやめたこんな真っ赤なものはまだ渡せない私は帰って、報告した
「何………依頼主居なかったのか……うーーむ、まあそんな日もあるだろうな、すまんな……わざわざ御苦労かけて」
「いえ………また後日行きます、それまでに失礼のないように、刀を良くしておきます」
「すまんな、わざわざ」
「いえ失礼しました」
報告したうその報告を、ほんとのことなんて言えなかったから
とにかく今はこの刀をきれいにしてまた納めなければ
明日返そうと私は近くの宿で寝ていた、そして夢を見る
「(もう一度あの力をあの快感を……)」
そこに響く声……そして何故かうずいてきた
「委ねて抗うな」
「ああ………あの興奮、もう一回で良いのよぅ……
堪らないあの快感をもう一回……あはあ………」
あの時、気付けばよかったのかもしれない、いや気付いたところで遅かったのかもしれないが、
胸の快感で意識が途絶えていた時、立ち上がった時、口元に出ていた血を夢想するように恍惚とした顔で親指ですくいなめていた
あの時を………
そして再び響く声……
「どうだ、収まらないんだろう……素直になっていいんだぞ、もっともっと気持ちよくしてやる」
「だ、だれが……あああん、私は気持ちよくなんて………気持ちよくなんて………」
疼きを察せられ最初は従わないも堪らなくなり
「ああ……ちょっとだけよ………胸の奥が凄くうずくの………」
「ふふ、少しだけだな」
「ええ………」
そう言われ、あの時ほどではないが呑み込んでいく感覚がむしばんでいく
「あはあああん!!!!いい、いいよぅ!!!!」
「ふふ、まるでお主、それだと奴隷だぞ」
「ああ………奴隷……これが……それもいいかもね……あぁん」
従うと堪らない快感が襲い、私はあっという間に虜になり逝く
「ふふふ、今すぐに主としての力を与えてもいいが、それでは面白くない
まだまだお前には、試すことがあるからな」
「あああ………」
「まずは、なじませるためにその刀を持っているのだ、そうすれば段々気持ちよくなってくる」
「あああ……それだけで………分かりました……修行を重ね気持ちよくなります、だからお願いしますね」
「(ふふふ、少しやるだけでこれとは……大したものに巡り合えたものだ、じっくりと馴染ませそしてこの世界を血で染め上げてやろう)」
・・・・・
「あれ………私……なんだろう……なんかした気がするけど………変な夢見たなあ…………さてと、今日も修行だ」
そして、私はいつもの刀ではなく私はその刀を持っていた
「あれ………何で私………まあ、たまにはいいわよね……」
私はその刀が手放せなくなってきていた、すりこみが行われようとして染まって変わろうとしていることに気づかずに