【カイロ=押野真也】エジプトのモルシ大統領が自身の権限を大幅に強化する憲法令を発布したことに、同国で反発の声が強まっている。23日にはカイロで1千人規模のデモが起き、一部が治安部隊と衝突。27日には反対勢力とモルシ大統領の支持勢力の双方がそれぞれ集会を予定するなど、国内を二分する騒動に発展する可能性がある。
モルシ大統領が発布した憲法令は大統領が国内安定のための全事象に対する決定権を持つことや大統領の決定に対する異議申し立ては認めないことなどを明記。2011年1月に起きた反体制派殺害に関与した旧政権幹部の責任追及を再開することも盛り込んだ。
大統領の決定に対し、大統領や大統領が所属するイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」に権限が集中することを懸念する勢力は23日に各地でデモを実施。デモは同日夜まで続き、地中海沿岸のアレクサンドリアでは同胞団の事務所が襲撃されるなど一部が暴徒化。カイロ中心部でもデモ隊と警官隊が衝突し、24日までに全土で90人以上が負傷した。
国民の反発を受け、モルシ大統領は23日にカイロで演説。大統領権限の強化は13年前半の選挙を経て人民議会(国会)が誕生するまでの「暫定措置」だと主張した。旧政権幹部の責任を追及する意向も強調し、権限強化は「(旧体制を排除して)革命を守るため」などと弁明に追われた。
ロイター通信によると、司法機関を監督する最高司法評議会は24日、憲法令を「司法の独立に対する前例のない攻撃」と非難、反発が収まる様子はない。反対勢力は27日にも集会を開く予定。一方、ムスリム同胞団は大統領への忠誠を示すデモを25、27日に開くと支持者に呼びかけた。
モルシ大統領はイスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配する原理主義組織「ハマス」の停戦を仲介。21日に停戦合意が発効し、欧米諸国から評価の声が高まったばかり。今回の権限拡大の発表は欧米の批判をかわしやすいタイミングを狙ったとの見方も多い。
原理主義組織出身のモルシ大統領に対しては国民の1割を占めるキリスト教徒や原理主義思想に反対するリベラル派などは強く警戒。今回の決定はこうした勢力の懸念を強めかねず、欧米諸国も批判を強める可能性もある。
政権に反対する勢力は今後もデモを継続する構え。政権側との対立が激化し、国内が不安定になれば、新憲法の制定作業や議会選挙の障害になりかねない。エジプトと同様に独裁政権崩壊後に国家再建を進めているチュニジアやリビアなどの内政にも影響を及ぼす可能性もありそうだ。
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