社説:2012衆院選 日本の針路 社会保障 「自助」か「公助」「共助」か
毎日新聞 2012年11月19日 東京朝刊
超高齢化・少子化対策は政治が火急に取り組むべき課題である。日本の人口は05年に戦後初めて前年を下回り、10年以降は加速度的な減少局面に入った。経済や社会全体の地盤を揺るがせる人口減少に突入して初めての総選挙でもある。持続可能な社会保障をどう構築するかは重要な争点だ。
税と社会保障の一体改革で民主・自民・公明の3党合意は成立したが、中長期的な将来ビジョンの策定はこれからが本番だ。錯綜(さくそう)し続けた社会保障改革論議の中から重要な理念の違いが浮かび上がっている。
◇弱まる自立の基盤
芸能人の親が生活保護を受けていたことをきっかけに自民党は生活保護行政を批判し、保護費の1割削減を盛り込んだ社会保障改革案を打ち出した。自分の生活は自分自身や家族による助け合いで支える「自助・自立」を基本とした改革である。それ以前から子ども手当を「子どもを育てるのは親の責任」と批判、最低保障年金にも反対するなど、民主党の社会保障政策を批判してきた。
一方の民主党は最低保障年金の創設、後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の廃止などを掲げて09年総選挙で勝利した。小泉純一郎政権時代に社会保障費の自然増を毎年2200億円削減したことに端を発する「弱者切り捨て」批判を丸ごと取り込んだマニフェストを政権交代の原動力にしたのだ。
鳩山由紀夫政権は子ども手当、生活保護の母子加算復活、肝炎対策など弱者に手厚い政策を次々に実行したが、財源が思うように捻出できずに挫折する。それぞれの政策の整合性に欠け、目指すべき社会の全体像や理念も明確だったとは言い難い。自民党の自助路線とは異なるが、真の意味で「公助」と言えるものかどうかは議論の余地があるだろう。
日本維新の会やみんなの党などの第三極も経済を優先し社会保障費を抑制する「自助」路線に沿った政策を掲げている。生活保護を必要とする人は増え続け、受給総額も3兆円を超える。経済的に自立できる職に就けず、親の年金で生活したり、ひきこもったりしている若者も多い。ただでさえ現役世代の人口は減り続けているのに、このままでは社会の活力は失われ、社会保障の地盤沈下は加速するばかりだ。働ける人は働いて自力で生活できる社会を目指すのは当然である。