延岡の女性死亡事故:裁判員裁判 被告に懲役8年判決 危険運転致死罪を適用 「相当程度の酩酊状態」 /宮崎
毎日新聞 2012年10月30日 地方版
昨年2月、延岡市で飲酒運転をして死亡事故を起こし、危険運転致死罪に問われた福岡県太宰府市、元大学生、田中輔被告(23)の裁判員裁判の判決公判が29日、宮崎地裁であった。中田幹人裁判長は「運転の動機や経緯に酌むべきものはない。遺族の処罰感情が厳しいのも当然」などとして懲役8年(求刑・懲役12年)を言い渡した。【菅野蘭、中村清雅】
判決によると、田中被告は昨年2月13日未明、乗用車を飲酒運転して対向車線を越え、軽ワゴン車を運転していた志水礼子さん(当時54歳)に時速116キロで正面衝突し、死亡させた。
争点は、危険運転致死罪の成立要件となる▽アルコールの影響で正常な運転が困難だったか▽制御が困難なほど高速だったか−−の2点だった。検察側は「通常ならふらつくほどの血中アルコール濃度で、速度も一般人は時速100キロが限界」と指摘。弁護側は「酩酊(めいてい)はしておらず、事故原因は携帯電話の脇見が原因」としていた。判決は「相当量の飲酒をし、相当程度の酩酊状態にあり、自動車の運転を困難とする程度」と認定。一方、速度については「進行制御が困難な高速度で進行したとは認められない」とした。脇見運転については「脇見をした時間は2秒」と被告側の一部主張を認めたものの、「正常な状態にある運転者では通常考えがたい注意力の弛緩(しかん)した異常な状態」で、これも飲酒酩酊の影響が原因と判断し、危険運転致死罪を適用した。
遺族で、志水さんの長女千草さん(29)は「短いというのが率直な感想。飲酒運転事故の遺族になるのはつらいこと。多くの人に飲酒運転の根絶に気持ちを向けてほしい」と語った。一方、被告弁護人は「控訴については、被告と話し合って決める」と述べた。
閉廷後、裁判員の記者会見が開かれ、5人が出席。30代の男性裁判員は、危険運転致死罪について「刑期が1〜20年と幅がありすぎ、量刑を決めるのが大変だった。もう少し幅を縮めるような法整備をしてほしい」と感想を述べた。