延岡の女性死亡事故:「危険運転」適用なるか 裁判員裁判、きょう判決 遺族は厳罰求める /宮崎
毎日新聞 2012年10月29日 地方版
昨年2月、延岡市で飲酒運転して死亡事故を起こし、危険運転致死罪に問われた福岡県太宰府市、元大学生、田中輔(たすく)被告(23)の裁判員裁判の判決が29日、宮崎地裁(中田幹人裁判長)で言い渡される。弁護側は「事故は脇見が原因」などとして同罪の成立を否定し、より量刑の軽い自動車運転過失致死罪の適用を主張。遺族は「自分たちと同じ思いをする人を減らしたい」と厳罰を求めている。【菅野蘭】
起訴状によると、田中被告は昨年2月13日未明、市道で乗用車を飲酒運転して対向車線にはみ出し、時速116キロで軽ワゴン車に正面衝突。運転していた延岡市別府町、志水礼子さん(当時54歳)を死亡させたとされる。
争点は、危険運転致死罪の成立要件となる▽アルコールの影響で正常な運転が困難だったか▽制御が困難なほど高速だったか−−の2点。検察側は「通常ならふらつくほどの血中アルコール濃度で、速度も一般人は時速100キロが限界」と指摘。弁護側は「酩酊(めいてい)はしておらず、事故原因は携帯電話への脇見」で、速度も道路状況などから「制御不能でなかった」と主張する。
志水さんの長女千草さん(29)は事故の約1カ月前、礼子さんの勧めで福岡市の病院に看護師として就職したばかりだった。妻を失ったショックで体調を崩した父康彦さん(60)を心配して退職し、2人暮らししていた妹(27)と実家へ戻った。今も時折「お母さんは?」と近所を捜し回ることもある父を、姉妹で支える。
裁判員裁判は9日に始まった。千草さんは被害者参加制度で意見陳述し「お母さんの無念を、私たち遺族の深い悲しみをご自身に置き換えて考えてもらえないでしょうか」と訴えた。24日、検察側は懲役12年を求刑。弁護側は仮に危険運転致死罪が適用されても、判例から懲役6年が妥当と主張し、結審した。
千草さんは「母は正義感が強く『おかしいことはおかしいと言い続けなさい』と話していた。危険運転致死罪が適用されなかったら、この事件が判例にされてしまう」と話す。