延岡の女性死亡事故:「携帯で脇見が原因」 弁護側、運転過失致死を主張−−危険運転致死罪・裁判員裁判初公判 /宮崎

毎日新聞 2012年10月10日 地方版

 延岡市の市道で昨年2月、飲酒運転をして衝突した軽ワゴン車の女性を死なせたとして、危険運転致死罪に問われた福岡県太宰府市の元大学生、田中輔(たすく)被告(23)の裁判員裁判が9日、宮崎地裁(中田幹人裁判長)で始まった。被告側は起訴内容の一部を否認。「事故は携帯電話の脇見が原因で、飲酒や高速度によるものではない」として同罪の成立を否定した。裁判は24日に結審し、判決は29日に言い渡される。【菅野蘭、中村清雅】

 起訴状によると、田中被告は昨年2月13日午前3時40分ごろ、酒を飲んで市道で乗用車を運転。対向車線にはみ出し、志水礼子さん(当時54歳)運転の軽ワゴン車に時速約116キロで正面衝突し、死亡させたとしている。道路の制限速度は時速40キロだった。

 争点は、アルコールの影響で正常な運転が困難だったか▽制御が困難なほどの高速度だったか−−の2点。検察側は冒頭陳述で「血液1ミリリットル中(酒気帯び運転の基準の約7倍にあたる)2・199ミリグラムのアルコールが検出された」などと指摘して、危険運転致死罪にあたると主張。弁護側はアルコールや高速度での運転が原因でなく「携帯電話に脇見をした結果、対向車線にはみ出した」として、道交法違反と自動車運転過失致死罪の適用を求めた。

 田中被告は道交法違反容疑で逮捕・起訴され、自動車運転過失致死容疑で追送検されたが、志水さんの遺族が自動車運転過失致死罪(最高懲役7年)より量刑の重い危険運転致死罪(同20年)の適用を求め、約2万8000人分の署名を集めて宮崎地検延岡支部に提出。11年7月、宮崎地裁が危険運転致死罪への訴因変更を認めた。

 志水さんの長女千草さん(29)は被害者参加制度に基づき陳述する予定で、「飲酒運転を無くしたいという思いを伝えていきたい」と話した。被告側の洲崎達也弁護士は「飲酒運転は許されるものではないが、間違った法律が適用されてはいけない」と述べた。

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