’12裁判員:2少女ひき逃げ・懲役17年(その1) 母「一生許さない」 地裁、自己保身優先を指摘 /長野
毎日新聞 2012年10月20日 地方版
◇「お帰りの返事ない…」
長野市で昨年11月、17歳の少女2人が死傷したひき逃げ事件の裁判員裁判判決。長野地裁は19日、殺人罪や道交法違反(酒気帯び運転、ひき逃げ)などの罪に問われた同市の当時19歳の元少年(20)に懲役17年(求刑・懲役20年)を言い渡した。高木順子裁判長は「(元少年は)被害者の命より自己の保身を優先し、身勝手極まりない」と指摘し、亡くなった同市の徳竹優菜(ゆうな)さんを約700メートル引きずり、死亡しても構わないという未必の殺意を認めた。弁護側は即日控訴した。【福富智、小田中大、渡辺諒】
午後2時半、元少年は傍聴者が法廷に入る前に証言台の椅子に座り、判決を待った。高木裁判長が主文から判決を読み上げ、元少年は静かに聞き続けた。
争点は「未必の殺意」の有無。死亡した徳竹さんをはねた後、引きずった認識があったかどうかだった。
検察側は「徳竹さんの悲鳴などから引きずりを認識しており『死亡させるかもしれない』と認識しながら引きずった」と殺人罪の成立を主張。弁護側は「車底部で引きずっていたことは分からず、殺意はないので殺人罪は成立しない」と自動車運転過失致死傷罪の適用を求めた。
判決で高木裁判長は「証言や証拠などから元少年は、徳竹さんの悲鳴に気付き、一度停止した後、再発進したと認定できる」と検察側の主張を認定。弁護側の「パニック状態だったため、悲鳴などに気付かなかった」という主張を「元少年の動揺は想像できるが、悲鳴や運転に生じた異常を認識できないほどの心理状態ではなかったと言うべきだ」と退けた。
また、高木裁判長は「殺意は未必にとどまり、元少年なりに反省や謝罪の気持ちを表し、被害者の冥福を祈っている」とも述べた。元少年は裁判長をじっと見つめながら、約40分間の読み上げを聞き、終わると小さくうなずいた。
◇「中立性、大変さ分かった」 元補充裁判員が心情吐露
判決後、元補充裁判員の50代男性が記者会見し、1カ月以上に及ぶ裁判員裁判に「長い公判だった」と心情を語った。