’12裁判員:2少女ひき逃げ・懲役17年(その2止) 「目撃証言に信用性」−−判決要旨 /長野
毎日新聞 2012年10月20日 地方版
<判決要旨>
少女2人が死傷したひき逃げ事件で、元少年に懲役17年を言い渡した地裁判決の要旨は次の通り。
◆殺人罪の成否について
弁護人はそもそも元少年に徳竹優菜さんの悲鳴や引きずっていた認識がなく、故意はないと主張する。現場付近の目撃者は、悲鳴が聞こえ、車がコンビニエンスストア前で5〜10秒ほど停車し、再度発進させたと証言しており、その信用性は高い。引きずり痕はコンビニ前で(道路)左側に寄り、血だまりとなっている。目撃者は「車が重そうな感じで走っていく印象を受けた」と証言している点などから(1)徳竹さんが悲鳴を発し(2)車はコンビニ前に停車した後、再び発進(3)車にはアクセルペダルが重いなどの異変が生じていた−−の各事実が認定できる。
人形を使った県警の車両実験や目撃証言を総合すると、特段の事情がない限り、元少年は徳竹さんの悲鳴を認識し、アクセルなどに生じる違和感を気付いたと認定できる。コンビニ前で停車したことは、元少年が悲鳴や異状に気が付いていたと雄弁に物語っており、酒気帯び運転及び事故の発覚を免れるために更に逃走しようと決意し、あえて発進走行したと認定するのが相当。「未必の殺意」を抱いていたと認定できる。
◆量刑理由
指摘すべきは、人を車底部に巻き込んだまま引きずる殺害方法の残忍さと、若く尊い命が奪われた結果の重大性である。頭部は車底部とアスファルトで摩擦された結果、致命傷となり、遺体の無残な姿はむごさを彷彿(ほうふつ)とさせる。被害者の悲鳴に込められた痛み、恐怖、絶望の心情を思うと哀れでならない。
元少年は交通事故とひき逃げだけでも強い社会的非難に値するが、被害者の命よりも自己の保身を優先させ引きずり続けたのであり、身勝手極まりない。酒気帯び運転には常習性もあるなど、自己中心的で法軽視の態度は否めない。
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◆元少年の公判の主な争点と判決◆
◆引きずりの認識
◇検察側の主張
元少年は引きずり音やアクセルの抵抗感、悲鳴などから引きずっていることには気が付いていた。一度、停車して逃走を諦めるか、徳竹優菜さんを助けるか迷ったが、飲酒運転の発覚を恐れ、徳竹さんが死んでもやむを得ないと走り続けた