2012衆院選:14政党乱立、戸惑う有権者 各党、争点づくり懸命
毎日新聞 2012年11月25日 東京朝刊
◇安倍氏、保守色を前面に 民主、「中道」路線で対抗 維新、結集急ぎ改革後退
衆院選(12月4日公示、16日投開票)へ向け14政党が乱立し、有権者側から「何を基準に投票すればいいのか分からない」と戸惑う声が出る中、各党は争点づくりに懸命になっている。政権奪還へ意気込む自民党の安倍晋三総裁は憲法改正による国防軍創設など保守色の強い「安倍カラー」を前面に出し、民主党は「脱原発」や「中道」路線で対抗。日本維新の会は第三極結集を急ぐあまり政策があいまいになり、既成政党との違いを示す「改革」の具体化に苦しんでいるのが現状だ。【竹島一登、念佛明奈】
「領土、領海、国民の命を守るのは誰か。国民から託された首相以外にいない」
安倍氏は24日、民主党の菅直人前首相の地元、東京都武蔵野市で街頭演説し、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件への菅政権の対応を「弱腰」と批判。「少し時間がかかるが、憲法を変えることが必要だ」と訴えた。
安倍氏にとって、強い保守色は最大の売りだが、党内には「強調しすぎれば懐の深い自民党のイメージを損ないかねない」(幹部)と無党派層の離反を懸念する声もくすぶる。
「自衛隊の存在は国民に安心をもたらしている。国防軍と名前を変えたらその役割が変わるのだろうか」
野田佳彦首相は24日、衆院解散後、初の街頭演説を東京都多摩市で行い、自民党の改憲公約にかみついた。民主党はほかの幹部も一斉に「右傾化」批判を強め、中道路線で無党派やリベラル層の取り込みを図る。安倍氏の主張する「大胆な金融緩和」にも矛先を向け、野田首相と安倍氏の「党首力」対決に持ち込みたい考えだ。
原発政策では民主党も再稼働反対派から批判を浴びているが、「30年代に原発ゼロ」の方針を決めていることをアピール。自民党は「10年以内にベストミックスを確立」などと結論を先送りしており、首相は「従来の原発依存を惰性で続けることになる。原発ゼロを目指すのか、現状容認か。大きな方向性が問われる」と強調した。
衆院選は民主対自民・公明に第三極が切り込む三つどもえの構図になりそうだが、首相が電撃的に解散に踏み切ったあおりで、第三極の結集・連携が遅れている。維新は太陽の党との合流を急いだ結果、「30年代に原発ゼロ」「企業・団体献金の禁止」など改革色の強い政策を撤回した。