信州・取材前線:御代田のひき逃げ2週間 低速で引きずりか 容疑者特定、有力情報なく /長野
毎日新聞 2012年10月12日 地方版
御代田町御代田の町道で9月27日、近くの軽井沢町職員、小島裕一さん(44)が何者かに車でひかれ、死亡したひき逃げ事件の発生から11日で2週間がたった。今も容疑者特定につながる有力情報はないが、県警は現場の遺留品鑑定から車体前部が大破した形跡がなく、何らかの事情で小島さんが路上に横たわった状態でひかれたか、車が時速15キロ以下の低速で小島さんを引きずったか、など事件当時の状況の解明を急いでいる。【巽賢司】
■破片は数点
事件は27日午前5時10分ごろ、町道(旧中山道)で小島さんが倒れているのを通行人が発見し110番。約30分後、町内の病院で多傷性ショックで死亡した。現場には約300メートルにわたり、小島さんの血痕などが残っていた。県警は遺体の状況から、車底部で引きずられた可能性が高いとみている。
捜査関係者によると、事件車両の遺留品とみられる自動車部品の破片が数点しか見つからなかった。大きな衝撃を伴う事故の場合、車の前部が壊れ、ヘッドライトなどの部品が残る。だが、今回は前部の部品やフロントガラスの破片は見当たらなかった。
車の破片が少ない理由は、横たわった状態の小島さんをひいたため、車前部に破壊が生じなかった▽車の走行が遅く、車体への衝撃が少なかった−−などが考えられるという。一方、遺留品の破片は国内メーカー4社が使用しているものと確認しており、県警は車種の特定を急いでいる。
■情報提供15件
発生は27日午前4〜5時ごろ。佐久署によると、26日夜、職場の送別会に出た小島さんはしなの鉄道・御代田駅前などで飲食し、翌27日午前4時前、駅から現場に通じる町道を歩いているのを、数人が目撃していた。
県警は現在も約90人態勢で捜査を続行。事件と同じ午前4〜5時ごろ、現場付近で聞き込みし、情報収集を続ける。捜査本部に10月10日時点で15件の情報が寄せられたが、容疑者特定につながる有力情報はないという。
現場の旧中山道は、御代田駅から北東の軽井沢町に抜ける狭い1車線道路(幅約5メートル)。軽井沢町への抜け道として利用されることが多い。朝夕の通勤時間帯の交通量は多いが、午前4〜5時の通行量は少ないという。現場近くの40代女性は「道幅が狭く、普段から歩くのは怖かった。故人が帰るわけではないが、容疑者が捕まってくれないと不安」と、今も不安を口にする。