◇九州場所<14日目>
(24日・福岡国際センター)
横綱白鵬(27)=宮城野=が4場所ぶりの優勝を決めた。優勝23回は貴乃花を抜き単独史上5位で、九州場所は6連覇。1敗で単独トップの白鵬をただ一人3敗で追っていた旭天鵬が大関琴奨菊に敗れて優勝が決まった。白鵬は大関鶴竜を退けて13勝目を挙げた。ことし通算75勝目で、既に年6場所制定着以降で最長の6年連続年間最多勝を決めている。今場所は16場所ぶりに東西の横綱がそろって注目された。新横綱日馬富士は2日目に初黒星を喫し、11日目から4連敗。
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白鵬がこれだけ素直に喜んだことがあっただろうか。「8カ月ぶりだねえ。夢みたいと言ったら大げさだけど、いいものですね」。土俵上の厳しい表情はどこへやら、支度部屋では心からの笑みを浮かべた。4場所ぶりとなる優勝は、貴乃花親方(元横綱)を超える史上5位の23回目。ちょっと足踏みはしたが、大きな階段を上った実感があふれていた。
「今までと全然違ったね。苦しい場所もあったけど、こういう日が来るんだと、信じてやってきた。気持ちでまいったことはなかった」
土俵下に控えていた取組前。3敗で追う旭天鵬が敗れたことで優勝が決まった。横綱は少しだけ視線を動かしたが、すぐにまぶたを閉じて自分の世界に戻った。そして、優勝が決まっていることなどまったく感じさせない厳しい視線を鶴竜にぶつけた。
敬愛してやまない双葉山の土俵入り姿が、九州場所のポスターに使われている。じっくり眺めた横綱は「ゆったりした中にも強さを感じる。その中でも目つきがね、“ウンッ”て感じ」。白鵬が引き込まれたのは双葉山の目だった。
白鵬が意識しているのはオオカミの目。2004年名古屋場所後にモンゴルへ帰国したとき初めて目撃した。「目と目が合った瞬間、鳥肌が立った。薄青い、あの目以上に怖いものはない。あの目を意識して相撲を取っている」。その目に力を込めた。
横審の鶴田卓彦委員長は今年になって「ピークは過ぎた」と酷評を続けているが、相性抜群の九州場所で完全復活。貴乃花親方は「まだこれから君臨するでしょう。(回数は)未知の世界。神のみぞ知る」。北の湖理事長は「30回を目指さないといけない」。横綱が2人になっても、「白鵬時代」は続く。
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