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加奈〜いもうと〜
   ややネタバレストーリー紹介

はじめに
 
私にとってこの作品と巡り会った事は「ゲーム如きに未だかってこれ程の衝撃を味わうなんて…」と自らが驚愕してしまう、そんな出来事だったと思います。
 それまでは「18禁のゲーム」など、見る気も起きませんでした。自分とは別世界の物と思っていました。それが人の紹介で初めてやってみた処、そのストーリーに引きずり込まれ、すっかりはまっていたという訳です。

◎ゲーム形式
 ゲームの構造はマルチエンディング方式で、途中の選択肢によって6種類のエンディングに分岐する、ノベルタイプのアドベンチャーです。大半が悲しいエンディングですが、それぞれ毎に違う涙を誘います。しかし、そのどれもが心に響くものだと思います。

◎ストーリーについて
 先天性腎不全の少女加奈と妹思いの兄隆道。これだけ取ってみたら実に月並みな設定です。ましてや血の繋がらない兄弟という設定に至っては定番中の定番です。恐らくこの設定しか耳にしていなければ多くの人はさほど興味を示す事も無かったでしょう。しかし、実際にプレイしてみると印象はがらりと変わるでしょう。加奈の丁寧さは自然な話運びにあります。見る人に「想いの深さ」を伝えるには日常の中に積み重ねをきちんと織り込むストーリーの組み立てが大切ですが、この話はそれが出来ています。加えて「死を目前にして人はどう生きるか」という、永遠の命題、重いテーマを若い兄妹なりに一生懸命生きようとしたその生き様で表現している事がこの話を深い物にしています。

 兄隆道が10歳の頃、2歳年下の妹、加奈の事を嫌っていました。加奈を過保護にいている両親を見て嫉妬していた事と、加奈の弱々しさが嫌だったのです。当時の加奈は小学校を卒業できないと医師に宣告されていて、両親は過剰なまでに加奈の面倒をみていた訳ですが、そんな事を知る由も無い隆道は何かと加奈をいじめていました。しかし、ハイキングの一件依頼、妹の見方を一変する事になります。両親のいないスキを見て、隆道は加奈をいじめます。すると精神的苦痛に耐えかねた加奈は体の不調を訴えます。驚いた隆道は妹を介抱します。ふいに隆道は妹が“危うい”存在である事を知ります。暫くして落ち着いた加奈がうまく花輪を編めない様を見て、気まぐれに隆道は花輪の編み方を教えてあげます。加奈に笑顔で「ありがとう」といわれた時に不思議な感覚にとらわれます。その後、加奈が行方不明になり、探し出した帰り道、加奈は蜂に襲われます。隆道はとっさに加奈庇って全身をさされ入院しますが、この時隆道には兄としての自覚が芽生えていました。
 病院生活の長い加奈は見舞いに来る友達もいません。自分も入院をしてみて初めて加奈の辛さを少しは感じる事となった隆道は、自分が見舞いに来る事を心待ちにしている加奈の想いに触れ、これから妹をずっと護っていこうと心に誓います。

 加奈の病状は快方に向かいます。まだ透析は続けなければならないものの、ある程度は日常生活も送れるように成っていました。高校生に成って行動範囲の広がった隆道は加奈をつれて色々な処に出かけます。思えば加奈との一番幸せな時期だったのかも知れません。
 中等期に叔母須磨子さんと従妹の香奈と巡り会うかどうかで、加奈と隆道の人生は大きく分かれます。乳ガンで余命幾ばくもなく、ホスピス棟に入院している須磨子叔母と触れあう兄妹。叔母の「死」を見つめた生き様とその娘香奈までもが肝不全という事実。そして「総てを受け止めて強く生きて欲しいから」と幼い香奈に全てを伝える母須磨子の意志。叔母の臨終に際し、身近な人間の死を目前にし、それまでの叔母との時間・経験が今後の加奈を大きく変えて行きます。通称(知的ルート)への分岐です。須磨子さんの生き様をみた加奈はその後の自分の運命に対して「どうしたら助かるか」より「残りの時間をどう生きるのが自分らしいか」を考える様になります。(ED5/6の加奈の日記参照)反対にこのエピソードを回避した場合、高等期に加奈への生体腎移植が行われ、生きる為の模索が行われます。
 隆道が高校3年になった時、加奈に好意を抱く少年、伊藤勇太が加奈との交際の意志を伝えて来ます。加奈の事を純粋だからという勇太に隆道は反発します。(選択肢による)

 高等期に、隆道と両親は医師から加奈が半年の命である事を知らされます。悲しみに耐えながらの家族の闘いが始まります。加奈に知られないように、加奈の最後の人生を彩らねばならない。この頃から隆道には妹への特別な感情が芽生えます。そんな頃、少年期に受けた心の傷の為、ずっと嫌いで避け続けていた鹿島夕美と再会します。ふとした事から関係を持ってしまった隆道はこの後も加奈のイメージを引きずりながら夕美との関係を続けます。傍目には恋人の様に。しかし、この夕美の存在はこの後も大きく隆道に影響を与える事になります。(ED3/6)。積極的な夕美の行動はいつしか加奈の知るところとなりますが、隆道は夕美との関係を加奈に肯定できません。

 それからは分岐シナリオによって展開が違います。
(知的ルート以外・一般)
夕美の存在に意識があるのか、加奈は兄妹の関係を越えて積極的に隆道を意識します。今度はその状態を訝(いぶか)る夕美に決定的な場面を押さえられます。その時、加奈に大きな異常が現れます。緊急入院となった加奈。加奈を救うために腎臓の提供を申し出る隆道ですが、本当の兄妹では無いことを知り、ショックを受けます。腎臓移植の結果は・・・・

(知的ルート系)
 ふとしたきっかけで幼い頃のアルバムに加奈がいない事に気がつく二人。たった2歳違いのはずなのに・・・・この頃、従妹の香奈までもが不治の病である事を知る隆道。体の異常を感じ始めた加奈は自らの死を予感し、自立を唱えて兄から意識的に離れようと考えます。大好きなお兄ちゃんに迷惑を掛けないようにと・・・でも隆道はそれでも加奈を守ろうとします。他の総てを犠牲にしても。落ち着きを取り戻した加奈は日記を書き始めます。そんなおり、突然夜に加奈が退院してきます。なぜだか外泊許可がおりた様です。(理由はED5/6の加奈の日記参照)隆道は考えます。加奈が見たがっていた海を見せてやりたい。翌日二人は海に行きます。もう自分では走ることも出来なくなった加奈を背負って砂浜を走る隆道。最後の退院で最高の思い出を作ろうとした二人。その夜、加奈は念願だった「伝えたい想い」を兄に伝えます。
 再度入院した加奈の容態が非常に悪くなっていきます。確実に“その時”が加奈に訪れようとしていました。

エンディング(もろネタバレ)へと続きます。