中世を代表する寓意物語。1230-35年頃ギョーム・ド・ロリスが初めの4058行を書き、これを未完としたジャン・ド・マン(d. 1305)が残りの17000行を書き足して完成した。夢物語の枠組みの中で、主人公が「閑暇」により庭園に案内され「悦楽」「歓待」などと出会った後に蕾の「薔薇」に恋し、「拒絶」「羞恥」「嫉妬」などに阻まれ、「理性」「友人」「自然」などとの長い対話の後に晴れて「薔薇」を勝ち取るまでを描く。本書の人気は、現存するだけで中世・ルネッサンス期の写本314点が知られていることからも窺える。彩飾には1460-80年頃パリで活躍した の名で知られる画家の影響が強く見られる。彩飾入りの『薔薇物語』で個人蔵のものは20点に満たないと推定され、うち本品に匹敵する豪華さのものはわずか数点のみである。