◆法令の根拠あやふや
浜松市が路上演奏やビラ配りを「禁止」するとの看板を掲げた駅前広場。写真中央の柵(点線部分)に看板を掲げていた=JR浜松駅前で
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通行人への迷惑行為を禁止するとして、浜松市が中区のJR浜松駅前広場に設置した看板が、法令の根拠があやふやだったため、わずか十日間で撤去されたことが分かった。「禁止」行為を列挙していたが、法や条例では行為そのものを禁じてはいないものばかり。お粗末な顛末(てんまつ)に、担当者らは「しっかり調べていなかった」と反省している。
看板が掲げられたのは、浜松駅北口の駅前広場の一角で、遠鉄百貨店のすぐ近くの二カ所。法的には「道路」になる。「以下の行為は禁止しています」とし、音楽演奏やビラ配り、物品販売、歩行喫煙などを挙げていた。周辺を所管する市南土木整備事務所が、「路上ライブへの苦情が出ており、マナーを徹底したい」との趣旨だったという。
十月二十七日に同事務所が設置したが、市内部で「禁止と言い切れるのか」との疑問が浮上。道路交通法では「通行の妨げになる」行為は禁止されるが、看板で記したものが単純には当てはまらず、県や市条例の該当項目も調べていなかった。このため十一月六日に撤去した。
市土木部によると、市総務部の法務担当部署とも検討した結果、「関係法令などはあるが、すべてを禁止してはいない。看板の内容では行為全体を禁止したようにとられる」「通行の妨げの判断も、内容や占有場所などで異なる」と判断。看板の誤りを認めた。
道交法のほか条例では市音・かおり・光環境創造条例、県迷惑防止条例、市マナー条例で該当項目がある。ただ著しく通行の邪魔になったり、大音量の騒音だったりするケースや、強引な客引き、大量のごみ投棄などでない場合は、現状で明確に「禁止」とうたうのは困難だという。
市土木部の担当者は「法的に詰めなかったことは反省している」とした上で、「まちづくりの観点からも駅前広場の活用を考える必要がある。産業振興の担当とも協議し、通行に支障が出ない活用のガイドラインを検討している」と、今後は内容を変えた新たな看板を置く予定という。
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